日立ソリューションズは4月19日、仮想空間上にサプライチェーンのデジタルツインを再現し、利益やコストなどをシミュレーションして試算できる「グローバルSCMシミュレーションサービス」において、温室効果ガス(CO2)排出量のシミュレーションにも対応する最新版を、4月20日から販売開始すると発表した。提供価格は個別見積もり。
同サービスは、サプライチェーンにおける需給量の変動や生産・販売施策を組み合わせた複数のシナリオで利益やコストを比較し、生産、販売計画を立案することができるもの。
今回の機能強化により、原料調達から出荷までの、企業活動に伴い発生する製品・部品単位のCO2排出量も合わせてシミュレーションできるようになる。また、CO2排出量上限を設定することで、数理解析を用いた計算モデルによって、制約に従うすべての組合せから最適解を求めることができるという。
例えば、原材料価格は高いがCO2排出量の少ない仕入先の原材料を使って、売上や利益を最大とするといった生産・販売案を導き出すことが可能だ。
日立ソリューションズ 産業イノベーション事業部エンジニアリングチェーン本部 第3部部長の小沢康弘氏は、「当年度の販売計画などの未来の計画に対して、発生するCO2量をあらかじめシミュレーションし、評価することができる。サプライチェーンシミュレーションモデルに定義したBOM(部品表)や設備情報に基づき、工場単位の温室効果ガス排出量を製品単位に分解できる」と、同サービスの特長を説明した。
実績データをマスターとして設定することで、1製品や部品あたりのサプライチェーンに関わるCO2排出量を試算することができるという。 具体的には、原材料、輸送、生産の各ステップに対してルールを定め、カーボンフットプリント(製品あたりCO2排出量)を算出する。
実績データとしては、日立製作所の環境情報管理サービス「EcoAssist-Enterprise-Light」と連携することで、原材料や輸送、生産、工場全体のサプライチェーンに関わるCO2排出量の実績を一元管理できる。
これにより企業は、数値データに基づいてCO2排出量におけるボトルネックが可視化されるため、クリーンエネルギーへの切替や設備計画・仕入先の変更など、効果的な削減計画の意思決定を素早くできるようになる。そして、売上や利益、CO2排出量などのバランスを勘案した仕入先の選定や調達経路、設備、製造、販売、輸送の見直しが可能だ。
政府は2050年カーボンニュートラルの実現、2030年に温室効果ガス排出量を2013年比46%減とする目標を発表した。産業部門の排出量が全体の3分の1を占めており、重点的な対策が求められている。非財務情報としての温室効果ガス排出量実績や、削減取り組みの公開が注目されている。
小沢氏は、「CO2排出量の『可視化』と『削減』は対であり、CO2排出量を削減するのであれば可視化した情報より目標を立て、目標への取り組み施策の立案、目標に向けたモニタリングが必要。逆に可視化は現状の把握であり、可視化で終わることなく目標を立て、削減に向けた取り組みが必要となる」と指摘した。
そして、日立ソリューションズ 産業イノベーション事業部事業部長の大池徹氏は「2022年度はSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)元年になる。SX関連の事業活動を通じて『環境価値』『社会価値』『経済価値』の向上を図り、持続可能な社会に貢献する動きが広がるだろう」と予測した。