レッドハットは4月12日、2022年度事業戦略説明会を開催した。説明会において、代表取締役社長の岡玄樹氏は初めに、昨年の振り返りを行った。グローバルベースでは、すべての4半期で二けた成長を遂げ、人員も大幅に増えており、現在は2万人に到達したという。
また岡氏は、長年同社のビジネスを牽引してきた「Red Hat Enterprise Linux」(以下、RHEL)の柱と見据えているコンテナプラットフォーム「Red Hat Openshift」について、導入企業が2020年から1000社増えて、3800社に到達したことを紹介した。
そして岡氏は、「DX(デジタルトランスフォーメーション)は次のステージに訪れたのではないか」と提言した上で、これからのDX推進のカギとして、「あらゆるクラウドの活用」「アプリケーションのクラウド対応」「組織文化、プロセス、スキル」を挙げた。2022年度は、これら3つの領域をビジネス戦略の柱とする。
「あらゆるクラウドの活用」の実現にあたっては、オープンハイブリッドクラウドの領域をエッジ、スマートファクトリーまで拡大する。エッジへの対応を含むネットワークの高度化に関しては、通信業を担当しているチームを独立させ、グローバルから一貫した支援で体制を強化する。製造業に関しては、ビジネス開発の専門営業を設置し、大手製造業を中心に新規事業を開拓する。
あわせて、自動化への取り組みを強化する。岡氏は、「顧客と会話をしていると、どのレベルまでの自動化を求めるかという話になる。自動化は、部門横断、会社全体にどうやってスケールしていくかが重要。成功モデルをパートナーに展開し、幅広い顧客に展開していく」と述べた。
「アプリケーションのクラウド対応」の実現に向けては、OpenShiftの新しい提供モデル、価格、サービスを展開する。岡氏は、「ここ1年の最大の変化を聞かれたら、マネージドサービスの利用の変化を挙げる。この1年間はクラウドでOpenShiftに触れる機会が増えた」と語った。
3月下旬より、新しいマネージドサービスとして、KafkaとAI/MLのサービスの提供が開始された。OpenShift関連製品は値下げが行われたが、これには導入の敷居を下げるという狙いがあるという。
「組織文化、プロセス、スキル」に対する取り組みとしては、アジャイル支援事業を拡大する。「この1年、本気でアジャイルに取り組む企業が増えたと感じている。Red Hat Open Innovation Labsでは、経営層との1on1を通じて、スクラムチームを構築して伝えていく。Red Hat Open Innovation Labsの参加企業数も増えている」と、岡氏は説明した。
加えて、岡氏はパートナーとの協業に関する戦略も紹介した。パートナービジネスにおいては、「エコシステムによるクラウド活用の促進」と「デジタル人材育成を支援・伴走型サービス」を推進する。
今回、最上位のパートナープログラムとして、「Premier Business パートナープログラム」が発表された。同プログラムのパートナーに認定されたのは伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、NTTデ-タ、NEC、日立製作所、富士通の5社となる。パートナー5社はレッドハットとのジョイントソリューションの開発や人材・有資格者の教育・育成、マーケティング活動のサポートを、レッドハットの専任チームから受けられる。
説明会には、コンサルテーションやワークショップを通じて顧客のシステム開発を支援するサービス「Red Hat Open Innovation Labs」を導入している第一生命ホールディングスより、イノベーション推進ユニットイノベーション推進グループ ラインマネジャーの清水智哉氏が参加し、同社の取り組みを紹介した。
第一生命ホールディングスは中期経営計画の柱に「CXデザイン戦略」を据えている。これまでの考え方から脱却し、顧客志向の徹底・浸透を図るため、バイブルとしてのCX 業務原則 を策定したが、それらのうち、「Start Small」と「Test with Customers」の実践に向けて、Red Hat Open Innovation Labsを活用しているという。
具体的には、Red Hat Open Innovation Labsを活用して、カルチャー変革、人材育成、MVP(Minimum Viable Product :実用最小限の製品)開発に着手したそうだ。
CXを重視するカルチャー・風土の醸成 に向けた第一歩として、の担当役員にとどまらずビジネス部門の担当役員を含めた約20名の経営層に対する1on1セッションを実施、「なぜ変わらないといけないのかをディスカッションした。1on1だから聞ける意見もあった」と、清水氏は語っていた。
また、MVP 開発を行う場としてアジャイル工房を設立 し、顧客視点に立ったプロダクト開発を進めつつ、開発を進めつつ、実践経験を通じたコア人財の育成も推進している。顧客フィードバックに基づいて継続的に改善が行えるようにリーンな予算配賦スキームも確立したという。