横河電機とJSRは3月22日、AI(Artificial Intelligence:人工知能)が化学プラントを35日間自律制御する実証実験に成功したことを発表した。
実証実験により、PID制御(Proportional-Integral-Derivative Action:比例、積分、微分の各計算による制御)やAPC(Advanced Process Control:高度制御)といった既存の制御手法が適応できず、運転員による「手動制御のみでしか対応できなかった作業」をAIが制御できることを確認したという。また、実際のプラントにおいて「強化学習AIが安全に適用できることがを示された。
今回の実証実験では、蒸留塔の留出物の品質や液面レベルを適切な状態に保ち、かつ排熱を熱源として最大限に活用するという複雑な条件をAIが満たし、品質の安定化や省エネ制御を実現した。
実プラントの制御においては「急激な外気温の変化」が制御の状態を乱す外的要因とされている。今回は、降雨や降雪などもある中で、精製された製品は厳しい基準を満たしており、すでに出荷されているとのことだ。また、規格外品が発生することによる燃料や人件費、時間の損失が削減できたとしている。
今回の実証実験で使用したAIは、2018年に横河電機と奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)が共同開発したFKDPP(Factorial Kernel Dynamic Policy Programming)というアルゴリズムを搭載している。このアルゴリズムは、「品質と省エネの両立」のような相互干渉する目標にも対応可能な強みを持つ。
化学プラントの制御は、物理的または化学的な事象が複雑に影響しており、熟練運転員など介入しなければならない作業が多い。また、PID制御やAPCなどの自動化を導入していても、一時的な降雨などに伴う急な気温変化に対応するために自動制御を中断し、熟練運転員が設定値や出力値を変更しなければならない場面もあるという。
こうした状況は多くの実プラントで発生しており、産業の自律化を進める上では、手動介入せざるを得ない状況をどのように自律制御に移行できるかが現場の課題となっていた。両者は今回の実証実験の成果について、従来では対応できなかった化学プラントの課題に対し、AIが解決の一助となる可能性を見出すことができたとしている。