帝国データバンクはこのほど、首都圏・本社移転動向調査(2021年)の結果を発表した。同調査は、2021年に首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)と地方間をまたいだ「本社所在地の移転」が判明した企業(個人事業主、非営利法人等含む)について、保有する企業概要データベースのうち業種や規模が判明している企業を対象に分析を行ったもの。

2021年に本社移転を行った企業は、全国で2258社だったという。これらのうち、首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)から地方へ、本社または本社機能を移転した企業は351社であることが判明し、前年から2割超の大幅増加となった。転出企業が300社を超えるのは2002年以来19年ぶりで、これまで最多だった1994年の328社を大幅に上回り、過去最多を更新したとのこと。

地方から首都圏へ本社を移転した企業は328社だった。この結果、2021年における首都圏の本社移転動向は、転出社数が転入を23社上回る「転出超過」となった。首都圏で転出超過となるのは2010年以来11年ぶりとのこと。

都道府県別に見ると、首都圏からの移転先で最も多かったのは「大阪府」の46社で、次いで「茨城県」(37社)となった。第3位の「北海道」は33社で、コロナ前の19年(7社)から約5倍に急増したという。

これまで、首都圏からの本社移転先は大都市部、北関東3県など首都圏近郊が多かった。しかし、リモートワークが定着したことで、遠隔地のほか、人口密度の低い地方・中核都市が本社移転先の有力候補に新たに浮上していると、同社は分析している。

  • 首都圏からの転出先 コロナ前から増加した都道府県 資料:帝国データバンク

首都圏から転出した企業の業種は、「サービス業」が156社で最多だった。このうち、ソフトウェア開発やベンダーなどソフトウェア産業が23社あり、サービス産業全体の1割超を占める。次いで、「卸売業」(60社)、「製造業」(51社)が多かったものの、卸売業の割合(17.1%)は過去最低で、製造業(14.5%)も19年(11.8%)に次いで低い水準だった。