資生堂は11月17日、「資生堂 R&D戦略発表会」を開催し、研究開発理念の発表や新しい研究成果の発表などを行った。
同発表会では、資生堂チーフブランドイノベーションオフィサーの岡部義昭氏からR&D部門の理念として“DYNAMIC HARMONY”が発表された。
DYNAMIC HARMONYとは一見相反する価値や両立が難しい価値を融合し、唯一無二の新たな価値を生み出すという資生堂独自のR&Dの考え方を同社の強みとして再定義したもので、「Inside/Outside(肌の内/外)」「Science/Creativity(科学/感性)」「Premium/Sustainability(プレミアム/サステナビリティ)」「Individual/Universal(個/普遍)」「Functionality/Japan Quality(機能性/日本品質)」という5つの柱で研究アプローチを進めていくという。
そして、Functionality/Japan Qualityの観点から2018年に同社が取得した米国ベンチャー「Olivo Laboratories」の人工皮膚を肌上に形成する特許技術「Second Skin」を基にした新しい研究成果を披露した。
ポリマーベースの基剤の上に、専用の基剤を重ねて塗ることで、肌と一体化し凹凸を補正する人工皮膚を肌上に形成する同技術。資生堂は、目袋をカバーする商品「SHISEIDO ビオパフォーマンス セカンドスキン」として2021年10月1日より発売している。
R&D戦略発表会ではSecond Skin技術をさらに進化させ、新たに3つの効果を生み出すことに成功したことを発表した。
頬のたるみ(ほうれい線・マリオネットライン)の即時形状補正効果
たるみとは重力で顔の形状が下垂した状態のことを指し、加齢とともに顔の各部位でたるみが起こり、目の下や頬に発生しやすく、このパーツのたるみが進行することで、見た目年齢の引き上げにつながっていたという。
そこでSecond Skin技術を活用し、頬上部のたるみによって生じるほうれい線や、頬下部のたるみによって生じるマリオネットラインに対し、肌に刻まれた線よりも上に、広範囲でSecond Skin技術の膜を形成すると、同技術の強い形状補正効果によって、たるみが引き上げられ、ほうれい線やマリオネットラインを目立たなくすることに成功したとしている。
連用によるたるみ・シワ改善効果
Second Skin技術を応用した試作品を連用することで、目袋のたるみやシワが改善することも見出した。44歳~66歳の女性33名を対象にした連用試験において、8週間後にはSecond Skin技術のない素肌の状態で目袋の体積が平均13.3%減少し、目袋のシワグレード(日本香粧品学会策定のガイドラインに基づくシワの指標)が20%改善したことを確認。Second Skin技術には使用時の即時形状補正効果に加え、肌悩みを根本から解決できる可能性が示唆されたという。
薬剤浸透促進効果
資生堂が開発した薬剤、4-メトキシサリチル酸カリウム塩(以下、4MSK)を塗布した部位をSecond Skin技術の膜で覆うことで、肌内部への4MSKの浸透を高めることに成功。また、塗布2時間後に、角層中に含まれる4MSKの量を確認したところ、膜で覆うことにより角層中の4MSK量が高まることがわかったという。
発表した資生堂みらい開発研究所の関根知子主任研究員は今回発表した3つの効果の実用化に加え、全顔での使用や、体を含めた全身への応用についても今後検討していくとした。