Seagate Technologyの日本法人である日本シーゲイトは10月26日、国内エンタープライズ向けストレージ事業の注力分野について発表した。
今後はデータの管理や活用など大容量ストレージの需要が高い、クラウド、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)、教育、M&E(メディアおよびエンターテイメント)、監視の分野に注力するという。
同日に開かれた記者説明会では、日本シーゲイト 代表取締役社長の新妻太氏によって、同社が開発した次世代記録技術であるHAMR(Heat-Assisted Magnetic Recording、熱アシスト磁気記録)技術を生かして、ハードディスク・ドライブ(HDD)のさらなる大容量化を実現する意向が示された。2026年までに50TB、2030年には100TBのHDDを発売し、大容量ストレージシステムを提供していく予定だ。
また今後は、HAMRやHDDの性能を約2倍に高める「MACH(Multi Actuator Hard disk).2」を活用して、ストレージの大容量化とサービス品質を維持しつつ、ヘリウム充填したハードディスク・ドライブの使用により消費電力と重量を削減し、TCO(総所有コスト)の削減に貢献する意向だ。
新妻氏は大容量、低いTCO、耐障害性、持続可能性、セキュリティの向上という日本の企業が抱える課題を踏まえつつ、「大容量HDDの投入とHAMRやMACH.2などの技術を用いたパフォーマンスの向上に加え、新しいHDDが世の中に出るタイミングに合わせて、データストレージシステムを投入し、低コストなソリューションとして提供したい」と今後の戦略を明かした。
同社はHAMRとMACH.2を用いた大容量ストレージについて、2023年には30TB以上、2026年には50TB以上の製品が製造可能になるとするロードマップを描いている。
同説明会では、日本シーゲイト 営業本部 本部長の安河内 智氏が自己修復機能を備えた大容量ブロック・ストレージ「Exos CORVAULT」の特徴と導入事例を紹介した。
ある通信事業者では、5G(第5世代移動通信システム)への移行により、ストレージ容量のニーズが10倍になり、最大で500PB以上になったという。背景にはアンテナやタワーの数の増加、インターネット接続可能なデバイスの増加、アプリケーションがネットワーク上に送信するデータ量の増加がある。
しかし、従来利用していたストレージはコストが高く、パブリッククラウドにすべてのデータを保存するというのはTCOの観点から現実的でなかったという。日本シーゲイトは、4Uラックに106台のSeagate ExosX18 18TB SASハードディスク・ドライブを搭載したソリューションを提案した。
「1筐体で1.7PBという高密度ストレージアレイを実現できたうえ、100PB以上に容易に拡張が可能だ。今回はオープンソースのCephを基盤とするSUSE Enterprise Storageと組み合わせ、ブロック、ファイル、オブジェクトの各ストレージに対応した汎用性の高い3-in-1インターフェースを実現できた。パブリッククラウドとの比較で5倍のTCO削減効果を創出できた」と安河内氏は明かした。