NECは9月14日、オンラインイベント「NEC Visionary Week 2021」にて、「ものづくりの未来を切り拓く、製造業におけるDXとは」と題した講演を行った。
同セッションでは、NEC スマートインダストリー本部 本部長の豊嶋慎一氏が、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組むうえでのコンセプトや活用するテクノロジーとともに、新サ―ビスを紹介した。
豊嶋氏は製造業のDXに役立つトレンドの技術として、5G・ローカル5GとAI、量子アニーリングを挙げた。その具体的な取り組みとして、ローカル5GとAIを活用した自社の生産工場での「マルチベンダーAGVの集中制御による自動搬送」の実証活動や、量子アニーリング技術を活用したサプライチェーンの組み合わせ最適化の検証事例を紹介した。
製造業を取り巻く環境が複雑化する中で、豊嶋氏は「これからの製造業にはリアルタイムな状況把握、最適状態への継続的な変化、変動対応力の向上、企業変革力の強化が求められる」としつつ、「データドリブン型ものづくり」の必要性を示した。
データドリブン型ものづくりの実現に向けて、NECは「Smart Factory」を基盤として「ものづくりサステナビリティ」の実現を目指す。
データドリブン型ものづくりにおいて課題となるのがデータ活用だ。現状、データを取得しているものの、データとそれを扱う部門が分断され、活用が不十分なままでいる企業は少なくない。
データが有効に活用される組織を構築するうえで、NECは「マインド」「活用プロセス」「仕組み」を重視する。マインドはデータ活用における姿勢を指す。活用プロセスではデータ利活用におけるプロセスの定義が重要となり、PDCAサイクルとOODAループによりプロセスが形づくられる。仕組みは良質なデータを生み出し、ハンドリングするIT基盤・システムのことだ。
「3つの要素が機能することで情報の一元管理が進み、経営層や各組織、現場など、それぞれに有益な情報がタイムリーに発信され、迅速な状態把握と意思決定の支援、データを駆使した仮説検証などが可能になる」と、豊嶋氏は語った。
そのうえで、NECのものづくりDXのコンセプトを発表。今後は「マインド」「活用プロセス」「仕組み」のそれぞれにサービスやソリューションを提供し、顧客やパートナーとの共創と通じてDXの実現を目指す。
講演では、マインドの醸成、活用プロセスの定着化支援のための新サービスとして、コンサルティングサービスである「ものづくりDX改善アプローチ」「ものづくりDX人財育成プログラム」と、分析支援ツール「ものづくりDX支援ガイド」が紹介された。
「ものづくりDX改善アプローチ」では、顧客の現場のデータを取得して分析を行い、課題の定量化や改善の方向性、システム導入の方針を顧客と共に検討する。また、「ものづくりDX人財育成プログラム」では、製造業向けのデータ分析の基礎や「ものづくりDX改善アプローチ」を顧客自身が実践できるよう、育成する。
「ものづくりDX支援ガイド」では、データ分析に活用できるひな型や利用ガイドをNECが提供し、企業が効率的なデータ分析に取り組めるよう支援するものだ。例えば、モニタリングすべきKPIや課題解決の改善シナリオ、データ整備のためのモデル(SCMデータモデルと5Mデータモデル)のほか、分析画面のテンプレートや分析の切り口、グラフの見せ方のコツなどもNECが提供する。
NECは今後、2025年を目安に自社内の「ものづくりのサステナビリティ」実現を目指す。そして、2030年に向けては、ニーズや顧客需要の急激な変動に対応できるような研究開発・製品企画などを行う「事業サステナビリティ」まで踏み込み、企業間連携やサプライヤー・物流といった製造業に関連する業種を含めた「産業全体でのサステナビリティ」まで、DXを拡大させるねらいだ。