NECは9月9日、記者説明会を開催し、今後のDX事業の目標や戦略を紹介した。

NECはこれまで、自社内のDX(コーポレート・トランスフォーメーション)を推進しつつ、得られた知見や業種ノウハウと同社の先端技術を集約し、コアDX(顧客のビジネスのDX)や、スーパーシティなどのフラッグシップ・プロジェクトに代表される社会のDXに取り組んできた。

また、2021年5月12日に発表した「2025中期経営計画」では、「コンサルからデリバリーまで一貫したアプローチ」や「ICT 共通基盤技術とオファリング」など、同社の強みを生かせる4領域を「コアDX事業」として定義し、成長事業に位置づけている。

説明会では、NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏が、「コアDX事業」の事業目標を発表。「2025年までに売上収益(売上高)5,700億円、調整後営業利益率で13%を目指す」と述べた。

  • NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 森田隆之氏

コアDX事業の推進、ならびに社会のDXへの今後の取り組みについては、NEC 執行役員常務の吉崎敏文氏が説明した。吉崎氏は、「ビジネスプロセス、テクノロジー、組織 ・人材を軸に、2019年から社内のデジタルシフト、DX推進に取り組んできた。次のステップとして、今後は3つの軸を重視した取り組みを全社展開していく」と語った。

  • NEC 執行役員常務 吉崎敏文氏

  • 3つの軸を全社展開し、DXへの取り組みを強化

ビジネスプロセスの領域では、200名のNECのDX戦略コンサルタントがNECグループのアビームコンサルティングと連携し、顧客視点に基づくアプローチによるコンサルテーションに取り組む。コンサルテーションにあたっては、戦略コンサル構想を策定。ITとネットワークの経験を培った社内人材がビジネス上流の構想策定から関わり、実装・実践、運用・アップデートまで顧客のビジネスを支援する。

「1年間で7業種・50社以上のキーアカウント(取引先)を獲得した。いずれも構想策定から関わっており、顧客接点の改革やITモダナイゼーションなど、数年先を見据えたDXのプロジェクトを進めている」と吉崎氏は明かす。

NECが有する価値・経験・技術などの知見を集約し、DX向けに提供するDXオファリングではメニューを拡充する。これまでエンタープライズのニーズを中心にした「業種共通DXオファリング」を提供してきたが、今年度からはSafer Citiesや社会公共・社会基盤にまで広げた「業種別DXオファリング」メニューを手掛ける。

  • NECのDXオファリングメニュー

テクノロジーの領域では、DXに必要な技術・サービスを統合した「NEC Digital Platform」において、PaaSの機能を強化し、ハイパースケーラーとの協業でグローバル展開を強化する計画だ。NECは2021年7月にマイクロソフトとの戦略的パートナーシップを拡大し、企業や公共機関へのクラウド導入やDX支援などについて発表。続いて、2021年9月にもAmazon Web Servicesとグローバル5Gやデジタル・ガバメントなどの領域での協業拡大を発表している。

「 NIST(米国国立標準技術研究所)が実施したベンチマークテストにおいて、当社の指紋認証技術、顔認証技術、虹彩認証技術は第1位の評価を獲得しており、それらを活用した機能をプラットフォームに組み入れ、標準のサービス機能として提供していく」(吉崎氏)

「NEC Digital Platform」を用いたDXの事例としては、スターアライアンスグループと協業で行った、顔情報と搭乗券・パスポート情報をひもづけて搭乗手続きが行える「非接触な空港搭乗手続き」や、ハワイの5つの空港にコロナウイルスの感染症対策として導入された「ウォークスルー体温検出ソリューション」が紹介された。

テクノロジーの領域では、DX人材育成プログラムを再定義・整備し、社内人材のデジタルシフトを実践すると発表した。現在5,000名のデジタル人材を2025年度までに10,000名に増員する。

また、社内で実践している人材育成プログラムを「NECアカデミー for DX」として外部にも提供するほか、DXの提案を行うスペシャリスト人材「NEC DX innovators 100」として位置づけ、ビジネスとテクノロジーの両面から同人材を拡充していく。

  • 「NEC DX innovators 100」のスペシャリスト(例)

従来、NECはAI、データ、セキュリティ、ネットワーク、クラウド、IoT、生体認証をコア技術としてDX事業を進めてきたが、吉崎氏は「今後は量子技術(量子コンピューティング、量子暗号など)、ヘルスケア・ライフサイエンスにおける高度AI活用、Beyond5G/6Gなど、最先端の技術も用いて社会課題の解決に取り組む」と結んだ。