KDDIは8月17日、水素で発電する燃料電池電源車(FC電源車)を活用して、CO2排出ゼロで基地局を運用する実証実験の結果から、基地局への給電手段として同電源車が有効であると発表した。
同社は災害などの長期停電時に基地局へ電力を供給できるよう、移動電源車を54台保有している。しかし、従来の移動電源車は軽油を燃料とするディーゼルエンジンを搭載しており、走行中および発電中にCO2が排出される。
さらに、車両を操作するにはスイッチやアナログメーターに関する専門的な知識が必要であり、操作できる人員も限られている。そこで同社は、FC電源車を移動電源車として活用して走行中および発電中のCO2排出量をゼロにするとともに、操作性を向上するための実証実験を開始したとのことだ。
同実証実験は、愛知県名古屋市の基地局における年次計画停電期間 (2021年6月12日) に実施したという。なお、同実証に用いたFC電源車はデンヨーとトヨタが共同開発したものである。
同実証において消費した電力量から、従来の移動電源車で発電した際に発生するCO2排出量を仮定して計算したところ、32.7kgの排出量であったという。一方で、FC電源車のCO2排出量は0kgであったことから、FC電源車導入によるCO2の排出削減量が確認できたとのことだ。
また、FC電源車にはスイッチやアナログメーターがなく、制御パネルのみで全ての操作が可能である。そのため、従来の移動電源車と比較して操作が簡便であり、専門的な知識がなくても始動から給電、停止までの一連の作業が行えることも同実証から示された。
さらに、auのエリアカバー用の電波を発する基地局に対して、FC電源車から安定的な給電が可能であったことに加えて、従来の移動電源車で発生していた約70.1dBの騒音がFC電源車では58.8dBまで抑えられたとのことだ。