7月20日、デル・テクノロジーズは、中堅中小企業のDXをを支援するためのオンラインイベント「中堅企業DXエグゼクティブフォーラム 2021」を開催。デジタル改革担当大臣 平井卓也氏も激励のビデオメッセージを寄せた。

デル・テクノロジーズ 代表取締役社長 大塚俊彦氏は冒頭、「コロナ禍での1年半、テクノロジーが私たちの生活、学び、社会、企業経営を大きく変えた。DX(デジタル トランスフォーメーション)は企業の競争力の拡大、社会の発展に欠かせないものになってきており、レジリエントな未来に向け、トッププライオリティになっている。そのために、デル・テクノロジーは皆さんを支援していきたい」と挨拶した。

  • デル・テクノロジーズ 代表取締役社長 大塚俊彦氏

中堅企業のDX動向と課題

基調講演では、デル・テクノロジー 日本最高技術責任者 黒田晴彦氏が、「中堅企業IT投資動向調査から見えたアフターコロナの中堅企業のDX動向と課題」と題して講演を行った。

同氏はデジタル変革を「デジタルがあることを前提に新しい社会の仕組みをつくっていくことだ」と説明。その後、3つの調査データをもとに、日本の中堅企業がDXに取組む上での課題を明らかにした。

  • デル・テクノロジー 日本最高技術責任者 黒田晴彦氏

世界中の企業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の現状と、デジタルの時代におけるビジネスのパフォーマンスを示す同社のグローバルでの調査「Digital Transformation Index 2020」では、米国、中国、日本のいずれの国においても、デジタル変革の阻害要因に「データプライバシー・サイバーセキュリティに関する不安」がTop5に入っており、サイバーセキュリティは世界共通の問題になっていることが明らかになったという。

  • 「Digital Transformation Index 2020」で見えたデジタル変革の阻害要因Top5

この調査によれば、日本では経営、人材、組織に関する問題が浮き彫りになったという。

経営面では、経営戦略の中にデジタルが入っていない点、人材では、デジタルスキルとノウハウ不足やデジタル文化が未成熟である点、組織ではデジタルのガバナンス(組織にデジタルを使っていくという意識が根づいていない点)があるという。

また、スイスのIMDが行った調査「Digital Competitiveness Ranking 2020」によれば、日本ではロボットやブロードバンドの利用は進んでいるものの、会社の素早い対応、デジタル技術のスキルやビッグデータの活用と分析力は大きく遅れているという。

そのほか、デル・テクノロジーが3月24日に発表した、中堅企業におけるIT投資規模およびデジタル トランスフォーメーション (DX)の投資動向、顕在化している課題に関する調査「IT投資動向調査2021」では、全社横断的な事業変革を実施した企業は全体のわずか3.5%に留まっているが、実施した企業の51.7%が業績が回復傾向であることがわかったという。

これを受け黒田氏は、「経営層の意思でデジタルを利用していく、経営改革に取り組んでいる企業は事業に好影響を与えている。ただ、それだけでは足りない。人材をどう育てていくのかという課題が見えている。また、データの可視化が重要になる。それが事業変革の第1歩になる。さらに、低コストで行うために補助金や助成金を活用することが重要になる」と語った。

こういった課題を乗り越え、中堅企業がDX実施していくことを支援するため、同社は昨年の9月から「中堅企業DXアクセラレーションプログラム」を実施してきた。

このプログラムは、中堅企業のDX推進のための総合支援プログラムで、同社と奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)が共同で推進しているもの。最新の技術を研究するNAIST研究員が講師となり、AI、ブロックチェーン、IoTなど、DX関連の技術概要や活用方法を学ぶ講座、DXエンジニア養成講座として実装するためのプログラミング技術の習得支援などを通じて、中堅企業のDX推進を支援する。

このプログラムでは昨年10月のコンテストを通じて、9つのプロジェクトがスタートしたが、いずれも困難に直面し、修正を予余儀なくされ、それによってステップアップしているという。黒田氏は、このステップアップには熱意、迅速、柔軟、連携の4つがキーワードになっているとした。

「企業がDXをやっていくためには、この4つが必要になる。そのためには、『やっていこう』という経営者のメッセージと、現場が協力連携していく変革の文化・風土があったうえで、最適な人材のアサインと組織のバックアップが重要なDX推進のフレームワークになる」と同氏は指摘した。

  • 企業がDXをやっていくためのキーポイント

中堅企業DXアクセラレーションプログラムによる支援は1年間だが、イベントの中でデル・テクノロジーズ 上席執行役員 広域営業統括本部長 瀧谷貴行氏により、第2回が実施されることが発表された。

第2回は10月8日から応募受付を開始し、本選は11月11日に行われる。第1回はAIが中心であったが、2回目ではVR/AR、エッジコンピュータにも領域が拡大するという。

  • 中堅企業DXアクセラレーションプログラムの第2回開催を発表

瀧谷氏は、「中堅企業のDXはこの1年で共有、学習、育成というフェーズから実践、変革というフェーズになりつつある」と、中堅企業のDXは実践フェーズになりつつあり、企業の課題も、より具体的なものになりつつあると語った。