富士通は7月26日、製薬・医療機器メーカーの治験業務の変革支援を目指して、SaaS型の臨床試験業務支援システム「FUJITSU ライフサイエンスソリューション tsClinical DDworks NX(以下、DDworks NX)」を提供開始すると発表した。同社は治験文書をデジタル化して、医療機関と製薬・医療機器メーカー間の連携を促進し、治験業務の効率化を目指す。

  • 「DDworks NX」の特長 資料:富士通

同ソリューションは、医療機関および製薬・医療機器メーカーが関わる治験業務の各段階において、これまで主に紙媒体で行われていた治験文書のやり取りをデジタル化するもの。さらに、同社が医療機関向けに提供しているSaaS型ソリューション「tsClinical DDworks21/Trial Site(以下、Trial Site)」と連携することで、医療機関と製薬・医療機器メーカーの間での治験文書のデジタル連携が可能になる。

同社は治験業務をデジタル連携し効率化することで、人件費や書類の外部保管倉庫にかかるコストを削減し、治験従事者の働き方改革に貢献していく狙いだ。利用画面は日本語と英語が切り替えられるため、近年増加する国際共同治験にも対応しており、翻訳作業の負担軽減も実現する。さらに、治験文書の記載項目の英訳も不要になるため、アメリカ食品医薬品局(FDA)などへの査察対応も効率化できるとのことだ。

日本製薬工業協会の発表によると、新しい薬を1つ開発するためには、一般的に約15年の歳月と数百億円から1千億円以上の研究開発費が必要であり、化合物が新薬として発売される割合は約0.003%であるとされている。特に新薬開発においては、医療機関と製薬・医療機器メーカー間での治験文書の手続きや、原資料の照合と検証(SDV)が紙媒体で実施されており、多くのコストと労力を要している。

さらに近年では国際共同治験が増加し、治験文書管理システムのグローバル化が求められているという。また、昨今の新型コロナウイルス感染症の流行の影響によって、直接の訪問による紙資料での対応が困難となり、治験業務のデジタル化に対する需要も高まっているとのことだ。こうした背景を受けて同社は、同ソリューションの提供開始に至ったという。

「DDworks NX」と「Trial Site」を連携することで、医療機関と製薬・医療機器メーカーがそれぞれで管理を行う、治験の実施記録(ISF)などの文書をリアルタイムで確認可能となる。また、各ソリューションのそれぞれにおいて、文書のやり取りを行った記録を発行できるため、従来は医療機関へ直接訪問して実施していた治験文書に関する業務が、デジタル上で完結する。

なお、「DDworks NX」は医療機関と製薬・医療機器メーカーが連携するために必要な機能を標準で備えているため、個別のシステム構築は不要とのこと。同ソリューションの初期導入費用は330万円からで、月額利用料は個別での見積もりとなる。