今、企業や地方自治体は、ペーパーレス化や業務のオンライン化、テレワーク導入、ニューノーマルなオフィスへの変革など、さまざまな対応を迫られている。新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、クラウドサービスの利用やテレワークの導入は急速に進んだ。
日本テレワーク協会の2020年度の調査によると、テレワークを導入している企業の割合は47.5%で、2019年の20.2%と比べると倍以上上昇した。また同調査によると、68.7%の企業が何らかのクラウドサービスを利用していることが分かった。
この流れを後押しするため、総務省や経済産業省、日本テレワーク協会など22団体が「第1回電子化・オンライン化支援EXPO」、「第1回テレワーク・在宅勤務支援EXPO」、「第1回ニューノーマルオフィスEXPO」の3つのイベントを援助し、各イベントが6月30日、7月1日の2日間パシフィコ横浜で開催された。
「Sansan」の2つの新機能
ブースを賑わせていたのはクラウド企業のSansanだ。同社は、法人向け名刺管理サービス「Sansan」や個人向け名刺アプリ「Eight」、クラウド請求書受領サービス「Bill One」などさまざまなクラウドサービスを展開している。
同社の2021年5月期第2四半期累計実績(6カ月)の連結売上高は、前年同期比21.3%増の76億3600万円、純利益は同24.3%増の66億9000万円、営業利益は同525.4%増の6億8600万円と、コロナ禍において驚異的な成長をみせている。
「Sansan」は名刺交換や名刺管理をオンライン化するサービス。Sansanのユーザーと非ユーザーとの交換も可能で、名刺から得られる情報を蓄積し、MA(マーケティングオートメーション)やSFA(営業支援システム)と連携させることでマーケティング活動に活用することも可能だ。導入企業は7000社を超え、業界シェア率は84%。
コロナ禍で増える反社をチェック
同社のブースに足を運ぶと、「Sansan」の新機能を2つ紹介してくれた。1つは名刺をスキャンするだけで取引先との取引リスクを検知するという「反社チェックオプション」。反社チェックサービスを展開するリフィニティブとKYCコンサルティングとの共同ソリューションだ。「Sansan」に取り込まれたすべての名刺データに対し、反社会的勢力との関わりを網羅的に検知するという。
具体的には、スキャンした名刺をSansanがAI(人工知能)と人力でデータ化し、それを「企業」と「企業代表者」のデータを網羅しているというリフィニティブとKYCコンサルティングのデータベース内で検索し、反社かどうかを判断する。さらに、それをデータベース化しリスクチェックリストを作成する。
Sansanの調査では、金融・不動産などコンプライアンス意識が高い業界においては、警察当局や暴追センターへの照会、本人確認作業などに多くの時間を割いていることが分かっている。また、「コロナ禍で反社会的勢力の活動が活発になっており、関わりを持ってしまう企業が増えている」(Sansan担当者)という。
反社チェックオプションにより、属人的な取引可否判断のリスクを回避するだけでなく、営業のロスを軽減する。複数回の商談を重ね、あとは契約するだけというタイミングで、コンプライアンスチェックすると取引先に問題が発覚し、商談が破談するといったケースを防ぐ。また、反社企業の一次チェックが自動化されることで、担当者の業務効率の改善にもつながるだろう。
ハイブリットな名刺管理を実現する「名刺メーカー」
もう一つ紹介してくれたのは「Sansan名刺メーカー」。2021年5月末より提供が開始されたこの新サービスは、「Sansan」上で紙の名刺の作成・発注申請ができる名刺作成サービスで、作成した名刺はオンライン名刺としても活用できる。
Sansanのサービス画面上から名刺の作成を行う。利用申請依頼は管理者の元に届き、総務部門などの該当部門が承認を行う。画面やCSVを用いて、一括作成することも可能。各従業員が必要な分だけ発注できるので、オンライン名刺と併用することで社内のデジタル化やペーパーレス化が進む。
同社の調査によると名刺発注1回にかかる必要な時間は約45分。社員自身が直接名刺を発注できるようになることで、時間をかなり短縮できるだろう。また、すべてオンライン上で管理できるので、総務部門のリモートワークの実現も後押しする。
同社は今後、名刺が急に必要になった場合に個人で対応できるように、社内の印刷複合機やコンビニ印刷にも対応させる予定。商談前に名刺が切れたことに気づいた場合でも焦る必要はなくなるだろう。