オンライン講座サービスのCourseraが、スキルに関するグローバル調査「Global Skills Report 2021」を9日に発表した。日本はテクノロジーは首位に、ビジネスとデータサイエンスではトップ10圏外となっている。調査ではまた、需要の多いデジタル系の仕事に就くためには35~70時間の習得時間が必要とも報告している。

Global Skills ReportはCourseraが将来の職場で求められるスキルを探る目的でCourseraのコースを受ける学習者、コースを提供する大学や企業、政府を対象に行う年次調査。3回目となる今回は、100以上の国でCourseraのコースを履修している7700万人以上の学習者、4000以上の大学、2000以上の企業、100以上の政府からのデータをベースとし、ビジネス、テクノロジー、データサイエンスの3つの分野のスキル能力を調べた。

日本は総合は4位。最も高いスコアはテクノロジーで、スコアは満点で世界1位となった。日本は産業ロボットなどで先行しており、量子コンピュータ分野の商業化で大きな進歩を遂げている。内訳としては、最も高い分野が「クラウドコンピューティング」(99%)、続いて「コンピュータサイエンス理論」(97%)「コンピュータネットワーキング」(96%)「コンピュータプログラミング」(81%)と続いている。最も低い分野は「モバイル開発」、その次に「セキュリティエンジニアリング」となっている。なお、「セキュリティエンジニアリング」は他のアジア諸国に比べると最も低い。

ビジネスでは、34位となった。最も高い分野が「コミュニケーション」と「人事」で共に88%。最も低い分野は「会計」の45%となっている。データサイエンスは世界では14位。「日本においてデータスキルは独自のチャンスをもたらしている。日本は国のヘルスケアシステムがあり、データの宝庫になっている」とレポート、高齢化とヘルスケアコストの上昇がビジネスチャンスを加速させていると分析している。内訳は、「機械学習」「予測と統計」(共に96%)、「数学」(93%)などが上位に、「データ分析」は26%と低い結果になっている。

なお、DX先進国という印象の強い米国だが、米国のデジタルスキルは30位、ビジネスは40位、データサイエンスは35位となり、「米国企業の91%がデジタル化計画を加速させているものの、実際の職場は追いついていない」と記している。

調査では、需要の多いデジタル系の仕事のエントリーレベルの業務につくのに必要なスキルと時間も割り出している。それによると新卒とキャリアの途中で変更した人は、エントリーレベルのデジタルのジョブスキルを獲得するのに要する時間はほぼ同じで、35~70時間(1週間に10時間の学習を1~2カ月)としている。一方で、学位がない人や経験のない人がエントリーレベルに達するには80~240時間(1週間に10時間の学習を2~6カ月)という。

世界各地で講座を提供する同社。スキル向上に向けての英文100ページを超える詳細なPDFのレポートは、クラウドにAIやデータ解析、ソフトウェア開発など求められるスキルごとの特徴なども抽出している。日本においても、ますます学ぶことへの取り組みが求められそうだ。

一方、ガートナージャパンは、スキル向上に関連する課題を先日 発表している。日本企業のクラウドへの投資意欲がここ10年でも大きなものになっているとレポートしており、スキルを高める投資も増加しているが、クラウドに対する上司の理解度については「理解しておらず困っている」という回答が約4割。管理職への説明に時間がかかることはもちろん、現場への適切かつ明確なディレクションや評価も行えなくなるため、"スキルの獲得は管理職には関係ない"とは言ってられないと手厳しいながらも課題として捉え、管理職がクラウドのスキルを身に付けるための時間と機会の迅速な提供を求めている。