ゼットスケーラーは5月20日、事業戦略説明会を開催した。同社はクラウドセキュリティに関するソリューションを提供するベンダーだ。同社のサービスは、クラウド上でゲートウェイセキュリティを提供するための機能「Zscaler Internet Access」、クラウド上で操作できるリモートアクセス機能「Zscaler Private Access」から構成されている。
初めに、創業者兼CEOのJay Chaudhry氏がグローバルにおける戦略を説明した。同氏は、「クラウドをビジネスの場として安全で快適に使用できるようにする」ことが同社のミッションであり、保護対象はネットワークではなく、ユーザーとデータだと述べた。「ユーザーがアプリケーションにアクセスする時に加えて、IoTやOTにアクセスする時の保護もわれわれの役割となる」(Chaudhry氏)
昨今、デジタル化やワークスタイル変革の推進により、業務アプリケーションをクラウド上で利用するケースが増えている。こうした状況について、Chaudhry氏は「企業を城に見立てると、アプリケーションはクラウドに移り、ユーザーは城の中からいなくなってしまった。新しいセキュリティのアプローチが必要」と説明した。新しいアプローチに基づくセキュリティサービスを提供しているのがZscalerというわけだ。
「従来型のアプローチをとる競合はDVDのようなハードウェアボックスを売っているが、われわれはNetflixのようなストリーミングサービスを売っている。従来型の企業がクラウドネイティブなサービスを提供することは難しい」(Chaudhry氏)
同社が狙っている市場は「2億人のユーザーと1億件のワークロードを対象としているため大きい」と語り、市場を攻略する施策の柱として、「顧客」「プラットフォーム」「新規市場」を挙げた。新規市場に関しては、これまで大手企業を中心に販売していたが、中小企業や公的機関に拡大するとともに、日本や中南米における拡大を目指す。
Zscalerのソリューションは、コロナ禍でテレワークが急増した際、高速かつ安全なネットワーク接続を実現できるとして、利用が増えた。Chaudhry氏は今後、ビジネスを伸ばすための新たなソリューションの分野として、IoT/OTおよび5Gを挙げた。
日本のビジネスについては、昨年に日本法人の責任者に就いた代表取締役の金田博之氏が説明を行った。同氏は「日本、アジアのビジネスが急成長しており、東京に加えて大阪にもデータセンターを新設した」と語った。
金田氏は同社の強みとして「マルチテナントアーキテクチャによるスケーラブルなプラットフォーム」を挙げた。これに関しては、Chaudhry氏も技術の差別化のポイントと話していた。「CRMにおいて、マルチテナントのクラウドサービスの提供を開始したSalesforceがSiebelに勝ったが、同じことがセキュリティの分野でも起こるのではないかと考えている。シングルテナントをマルチテナントに切り替えるのは簡単ではない」(Chaudhry氏)
日本における注力製品としては、「Zscaler Internet Access」「Zscaler Private Access」に加えて、「Zscaler Digital Experience」(ZDX)と「Zscaler Cloud Protection」(ZCP)が紹介された。ZDXとZCPは今後の注力製品となる。
金田氏は国内における取り組みとして、体制強化の紹介も行った。プリセールスに関しては、製品を提供するだけでなく、顧客と共同で、課題の整理と移行プランの取りまとめるグランドデザインを設計・評価するというスキームを実施しているという。ポストセールスにおいては、グランドデザインに基づき、マイルストーンの管理を行い、現状との乖離を明らかにすることで、改善を図っていくという。
また、金田氏は日本では金融や中小のニーズが伸びており、また、公共のニーズが伸びることを見据えて、準備をしていると語っていた。