デル・テクノロジーズは4月22日、ミッドレンジストレージ「Dell EMC PowerStore」の機能強化を発表するとともに、新たに低価格モデルの「Dell EMC PowerStore 500」を投入することを発表した。
PowerStoreは、2020年5月に、データ中心型のインフラストラクチャーとして新たに開発した製品。デルとEMCが統合して最初に開発されたストレージ製品に位置づけられている。
デル・テクノロジーズ 執行役員 ストレージプラットフォームソリューション事業本部の松田吉史事業本部長は、「PowerStoreは、進化する最新技術を常に投入することをコンセプトに開発したものであり、次の10年を担うストレージである。今回の発表は、進化し続けるというコンセプトを立証したものになる」と語る。
PowerStoreは、この1年間で400PBのストレージを、世界60カ国以上の教育、ゲーム、輸送、医療、小売、金融サービスなどに納入。同社によると、400PBのストレージは、MP3ファイルの楽曲で約1360億曲に相当するという。
「PowerStoreは、2020年8~10月の販売実績と、2020年11月~2021年1月の販売実績を比較すると、4倍もの成長になっている。EMC時代から含めて、過去最高の加速ぶりになっている。お客様から評価をいただいている」とし、「日本の企業は高い技術や機能を求めている。今回の機能強化は、日本の企業からも待たれていたものでいる。国内での導入に弾みがつく」(デル・テクノロジーズの松田事業本部長)とする。
今回の機能強化では、ストレージソフトウェアである「PowerStoreOS 2.0」の提供が最大のポイントだ。
「これまでにも、性能には高い自信があったが、PowerStoreOS 2.0によって、すべてのモデルにおいて、スピードの大幅な向上が図れる。データパスの見直しなどによって書き込みが最大65%高速化したほか、最大25%のIOPS向上を実現。ワークロードのパフォーマンスをさらに改善している」(デル・テクノロジーズ ストレージプラットフォームソリューション事業本部システム本部の森山輝彦ディレクター)と語る。
NVMe-FC(NVMe over Fibre Channel)に対応することで、NVMeがデータセンターにもたらすボトルネックを解消。ハードウェアの追加は一切不要で、シンプルなソフトウェアのアップデートだけで、NVMe-FCに対応できるようになる。
また、PowerStore Xモデルでは、AppsONによって、アプリケーションを直接ストレージプラットフォーム上で実行し、パフォーマンスやモビリティのほか、ワークロードの統合を加速させることができる。
「PowerStoreは、VMware ESXiハイパーバイザーを内蔵した業界唯一のストレージアレイであり、スケールアウトに対応したことで、医療やビッグデータ分析といった分野においては、エッジのストレージ集中型アプリケーションに、これまで以上のコンピューティングパワーを提供できるようになる」という。
PowerStoreOS 2.0では、インテリジェンス機能の強化によるデータプロセスの自動化とコスト削減も実現している。ここでは、容量とパフォーマンスを自動的に最適化するとともに、4:1のデータ削減保証などにより、ストレージ管理を簡素化。「インテリジェントデータ削減(Intelligent Data Reduction)機能は常時稼働するが、パフォーマンスへの影響は一切ない」という。
また、PowerStoreは、永続ストレージとしてSCM(ストレージクラスメモリー)を使用しており、システム内でSCMとNVMeドライブを識別。これにより、インテル Optane D4800Xドライブへの投資だけで、ワークロードのレイテンシーが最大15%向上し、高速なメタデータアクセスが実現できる。
さらに、DRE(Dynamic Resiliency Engine)によって、パフォーマンスを維持しながらドライブの多重障害を保護。従来のRAIDと比較して、管理の手間が最大98%軽減されるという。
PowerStoreOS 2.0は、既存のユーザーに対しては、無償で提供。PowerStoreを停止させることなく、アップグレードできる。2021年6月上旬から出荷を開始する。
そのほか、Dell EMC CloudIQによって、インテリジェントなインフラ管理を実現。問題解決を迅速化するために、原因特定をAIによってアシストすることでリスクを低減するほか、問題を事前に予測し、事前対応を促進する「予測による計画支援」、データセンター内のインフラストラクチャーを単一ビューで管理することでの「生産性の向上」を実現できるという。
一方、新たに発表した「PowerStore 500」は、2Uのフォームファクターに、最大1.2 PBのデータを格納でき、ブロックやファイル、VVolといったあらゆるエンタープライズワークロードのニーズに応えることができるほか、1分あたり最大 240万のSQLトランザクション処理や、アプライアンスあたり1500台のVDIデスクトップをサポートする性能を持つという。また、複数のPowerStoreアプライアンスを組み合わせて、スケールアウトが可能であり、自動化とデータモビリティ機能によって、管理性も高めているという。
デル・テクノロジーズの森山ディレクターは、「エンタープライズクラスのパフォーマンスとストレージサービスを、ストリート価格で2万8000ドルからという戦略的な設定で提供する。PowerStoreOS 2.0の拡張された機能をすべて利用できるほか、自動設定により、ドライブの拡張も簡単に行える。様々なPowerStoreとの組み合わせで、ワークロードの要求に応じたスケールの拡大が可能である。これにより、様々なワークロードに対応でき、リモート環境や支店、エッジ環境のほか、スケールアウトによって大規模なIT環境にも活用できる」としている。また、Dell Financial Servicesを利用することで、月額460ドルから利用できる。
「PowerStore 500は、最小限の規模と投資からスタートできる。次のストレージインフラセを検討する際には、最初に検討してもらいたい製品である」(森山ディレクター)と胸を張った。
PowerStore 500は、2021年6月上旬から出荷を開始する。
なお、PowerStore 500では、プリペイドコントローラーアップグレードプログラム「Anytime Upgrade」の利用が可能であり、契約期間中であれば、既存アプライアンスのノードを交換してアップグレードしたり、スケールアウトの際にも、2台目のアプライアンスへのディスカウントクレジットの提供などの特典が用意される。
デル・テクノロジーズでは、2020年8月に、デルとEMCジャパンを統合。それにあわせて、ブランドごとに分離していたストレージ部門も一本化した。現在、ストレージ部門では、プリセールス、セールス、インセイドセールスを含めて約250人体制になっているという。
「今後は、PCやサーバーに次ぐ、デル・テクノロジーズのもうひとつの柱として事業を加速させたい」(デル・テクノロジーズの松田事業本部長)としている。
デル・テクノロジーズは、外付ミッドレンジストレージ市場においては、全世界でトップシェアを獲得しており、国内の外付ミッドレンジストレージ市場においても、売上高では2年連続でナンバーワンのシェアを獲得しているという。また、外付けオープンネットワークストレージ分野では、2020年に初めて国内でナンバーワンシェアを獲得したという。
「コロナ禍において、ストレージ市場はマイナス成長だが、デル・テクノロジーズはシェアを大きく伸ばしている。今回の新製品の投入によって、国内ストレージ市場におけるシェアをさらに伸ばしたい」(デル・テクノロジーズの松田事業本部長)と意気込みを語った。