日本オラクルは3月16日、オンラインによる記者説明会を開催し、ハイブリッド・クラウドに関する製品戦略を発表した。

日本オラクルが提供する「Oracle Cloud Infrastructure (OCI)」は、クラウドネイティブおよびエンタープライズ企業のITワークロードを実行するために、オンプレミスのコンピューティング能力を提供するIaaS(Infrastructure as a Service)。ZoomやNTT西日本、一橋大学など、数多くの企業や団体が導入している。

日本オラクル テクノロジー事業戦略統括 常務執行役員 竹爪慎治氏は、「企業のシステムのモダナイゼーション、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するにあたってはハイブリッドクラウドの戦略が非常に重要。日本オラクルだけが最も包括的なハイブリッドクラウドのソリューションを提供できると考えている」と胸を張った。

  • 日本オラクル テクノロジー事業戦略統括 常務執行役員 竹爪慎治氏

日本オラクルがOCIの提供を開始してから約5年経過しており、2021年1月時点で、グローバルで29リージョンに展開している。マイクロソフトとの直接的な接続を実現する「Azure Interconnect」も東京を含む6リージョンのグローバル展開をみせている。さらに、国ごとに2つのリージョン「デュアルリージョン」でサポートする地域を増やしており、日本では東京と大阪でデュアルリージョンを実現している。

  • 29のOracle Cloud リージョン

日本オラクルが2021年02月10日より提供を開始している、「OCI Roving Edge(Oracle Roving Edge Infrastructure)」は、耐久性を高めた、可搬性と拡張性の高いサーバ・ノード「Roving Edge Devices (REDs)」により、コア・インフラストラクチャ・サービス、プラットフォーム、ソフトウェア、エンタープライズ・グレードのセキュリティ、アプリケーションをエッジやインターネットに接続されていない場所での利用を可能にする。

  • Oracle Roving Edge Infrastructure

接続にかかわらずOCIテナンシーを拡張でき、類似のインタフェースやワークフローにより統合された体験を提供するとのこと。Roving Edge Devices は40のOCPU、1つの「NVIDIA T4 Tensor Core GPU」、512GBのRAM、61TBのストレージなど高性能ハードウェアを搭載しており、5ノードから15ノードを1クラスターにまとめることができ、1ノード1日当たり160ドルから利用可能。

活用例としては、病院でのエッジ側での画像診断や、通信会社の基地局でのデータ処理・分析、工場でのIoTセンサーデータ分析などが想定される。

一方、ハイパースケールのクラウドサービスの「OCI Dedicated Region」は、日本オラクルのOCIリージョンで提供する機能を企業のデータセンターにそのまま展開することが可能。65以上のOCIサービス(Oracle Autonomous Database、Oracle Cloud Applicationsなど)を月50万ドルから利用可能。日本オラクルにより設置・運用管理、OCI サポートとSLA利用した分のみ課金する体系となっている。

  • OCI Dedicated Region

野村総合研究所(NRI)では、「OCI Dedicated Region」を導入しており、2021年3月現在、金融向けのSaaSアプリケーションを同サービスに移行中で、日本オラクルの開発メンバーと共同で整備している。

さらにグローバルにおいては、「OCI Dedicated Region」は公共の組織での活用が進んでいる。120を超えるオマーン政府・準政府機関のIT運用を標準化している。そのほか、100%オーストラリア主権企業が管理するデータセンター「Australian Data Centres」でも「OCI Dedicated Region」を導入しており、データ主権、セキュリティ、パフォーマンス属性に対応し、政府のクラウド・サービスへの移行を加速させている。

竹爪氏は、「日本市場においても、金融だけでなく公共を含めた従来のパブリッククラウドでは実現できなかったサービスやセキュリティ、データ試験が必要という組織に対してOCI Dedicated Region の展開を進めていきたい」と意気込みを見せた。

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次に、竹爪氏は、企業のテナンシー内にインストールされた企業が管理するネイティブなVMwareベースのクラウド環境を提供する「Oracle Cloud VMware Solution(OCVS)」の説明を行った。

日本オラクルとVMwareは、2019年に開催された米オラクルの年次カンファレンス「Oracle OpenWorld」において、パートナーシップの強化を発表している。そのポイントの1つは、VMwareの仮想基盤上の日本オラクル製品のサポートを、日本オラクルが正式に開始することになったこと。これは両社の20年以上にわたるパートナーシップにおいて初のことだという。もう1つが、OCVSの発表だ。

  • Oracle Cloud VMware Solution

OCVSは、クラウドネイティブのVMwareベースの専用環境を提供し、企業は使い慣れたVMwareツールを使って本番環境で稼働するVMwareのワークロードをOCIに移行させることが可能。同ソリューションによりオンプレミスのデータセンターと同一の体験をクラウドで提供し、「Oracle Dedicated Region Cloud@Customer」の展開など、日本オラクルの第2世代クラウド・インフラストラクチャとシームレスに統合することができるとしている。

以前から提供されていた「Oracle Cloud VMware」との差別化のポイントとしては、企業によるVMware仮想化基盤の管理だ。これまでオンプレミスで運用してきたことと同様の体験が可能になる。つまり、長年データセンターで提供してきたことが、OCVS上でそのまま利用可能となる。

現在、OCVSは数社のエンドユーザーと日本オラクルのパートナー企業に採用されているとのことだが、日本オラクルとVMwareは今後も、営業面、マーケティング面、技術面で協力しながらOCVSの販売を推進していく方針だ。