日本オラクルはこのほど、オンラインで記者会見を開催し、コロナ禍による財務管理の変化と、財務とロボット・人工知能(AI)との関係についての調査結果を発表し、同社の見解を示した。冒頭、登壇した日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括事業開発本部 本部長 野田由佳氏は、「日本はロボット・AIへの高い信頼を示す一方で、実際にはAIの導入が進んでいないという結果が得られた」と、説明した。

  • 日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括事業開発本部 本部長 野田由佳氏

同調査は、2020年11月~12月の期間、日本の500人を含む14カ国(米国、英国、ドイツ、オランダ、フランス、中国、インド、オーストラリア、ブラジル、日本、UAE、シンガポール、メキシコ、サウジアラビア)、約9000人の一般消費者と企業・団体の管理職以上を対象に実施された。

同調査によると、パンデミック以前と比較して、財務管理の不安とストレスは、企業・団体の管理職の間で、122%増加しており、世界的なパンデミックが、日本企業の財務管理においてマイナスに影響させたことを示している。

また、国内企業・団体の管理職の95%は、組織に対するコロナの影響を憂慮しており、最も共通した懸念は、低速な経済回復または景気後退(62%)、予算縮減(31%)、倒産(27%)という結果だった。

  • 国内企業・団体の管理職の95%は、組織に対するコロナの影響を懸念

一方、調査対象の国内企業・団体の管理職の94%は、自社の財務部門以上に財務管理にロボット・AIを信頼する回答している。同設問に対する14カ国の平均の回答は77%で、日本はロボット・AIに高い信頼を寄せていることが判明したとしている。

  • 自社の財務部門以上に財務管理にロボット・AIを信頼すると回答した企業・団体の管理職の割合

具体的には、85%の国内企業・団体が、不正の検知や請求書の作成コスト削減、利益 の分析などの業務に対して、ロボット・AIが財務業務を改善できると認識しており、83%の国内企業・団体が、予算編成と予測や、レポート、コンプライアンスとリスク管理、承認業務といった財務管理の支援をロボット・AIから受けたいと回答している。

  • 国内企業・団体の管理職の85%は、ロボット・AIが財務業務を改善できると考えている

  • 国内企業・団体の管理職の83%は、財務管理の支援をロボット・AIから受けたいと回答

しかし、実際に財務管理にロボット・AIの活用を行っているかという設問では、14カ国の平均の回答では、企業・団体の51%が活用を行っているとした一方、日本では27%に留まり最下位となった。結果として、日本はロボット・AIへの高い信頼を示す一方で、実際にはAIの導入が進んでいないという実態が明らかになったとしている。

  • AIを活用した財務管理(左) コロナ禍への対応としての具体的な取り組み(右)

また、コロナ禍への対応として、国内企業・団体の管理職の41%はデジタル決済機能に投資していると回答しており、38%は新しい顧客エンゲージメントの方法を創出した、または、ビジネス・モデルを変更したと回答しているが、日本は14カ国中最下位という結果になっている。14カ国平均では、69%がデジタル決済機能に投資し、64%が新しい顧客エンゲージメントの方法を創出した、または、ビジネス・モデルを変更したと回答。

同様に、国内企業・団体の管理職の81%は、財務プロセスを見直さない組織は、従業員の生産性の低下(32%)、競合他社からの遅れ(31%)といったリスクに直面すると回答している。野田氏は、「日本企業では、調査対象の14カ国と比較して、財務管理においてロボット・AIを信頼している一方で、AIの活用が進んでおらず、コロナ禍への対応としてデジタル化や事業変革などへの取り組みが遅れている」と、見解を示した。

日本企業が、AIやロボット活用に対してポジティブな意見を持っているのにも関わらず導入が遅れている理由として、野田氏は、デジタル人材の確保難、どのような効果が得られるのかが予測しづらいといった、ROI(Return On Investment)の曖昧さなどを挙げている。

野田氏は「現在のような不確定な時代には、未来を見据えた先読み経営の実践が必要。ファイナンスの業務においても、現在のビジネスの利益はどこから創出しているか、成長分野はどこかといった現在の状況を分析し、策定した戦略的な方向性を打ち出す中長期的計画などロードマップと比較検討して、高度なシステムを活用してデータ・ドリブンに判断する必要がある」と語った。

「高度なシステムを活用して多角的な洞察力を高めて、経営側に有益な情報を提供していく必要がある。そのためには今までの経理業務をできるだけ自動化して、効率化することが求められるだろう」(野田氏)