ヴイエムウェアは11月10日、オンラインで年次イベント「VMworld 2020 Japan」をスタートした。初日の基調講演では、CEOのパット・ゲルシンガー氏が登壇し、同社の戦略「Any App, Any Cloud, Any Device」を実現する最新のソリューションを紹介した。
Kubernetesを核としたアプリケーション分野での取り組み
ゲルシンガー氏はアプリケーション、AI、マルチクラウド、セキュリティ、5Gと同社が注力している各分野の最新動向について語った。アプリケーション分野で同社が力を入れているのは「Kubernetes」だ。ゲルシンガー氏は「マルチクラウドにおいて開発の効率を上げるには、Javaがもたらしたような普遍性が必要になる。それを実現するのがKubernetes。われわれは、企業がKubernetesを使えるように活動している」と述べた。
同社はKubernetes関連の製品群として「VMware Tanzu」を展開している。今年9月に、Tanzuの4つのエディション「VMware Tanzu Basic」「VMware Tanzu Standard」「Tanzu Advanced」「Tanzu Enterprise」が発表された。現在は「VMware Tanzu Basic」「VMware Tanzu Standard」が提供されており、「Tanzu Advanced」「Tanzu Enterprise」は今後提供される予定だ。
Kubernetesn関する新たなソリューションとしては、「vSphere with Tanzu」がある。これは、サーバ仮想化ソリューションにKubernetesを統合したもので、ゲルシンガー氏は「vSphere with Tanzuはコンテナ化されたアプリケーションのプラットフォーム」と説明した。
AI分野での取り組み - 「Project Monterey」
さらに、ゲルシンガー氏は「アプリケーションの将来、次世代サービスにおいて燃料となるのがデータだ。このデータを有効活用する上でカギとなるのがAI」と語った。
ゲルシンガー氏はAIに関する取り組みとして、9月末に米国で開催された年次イベント「VMworld」発表されたNVIDIAとの提携を紹介した。両社はAIとデータセンターアーキテクチャに関する幅広いパートナーシップを発表した。この提携に基づき、「NVIDIA NGC」を「VMware vSphere」「VMware Cloud Foundation」「VMware Tanzu」となどのVMware製品に組み込む。
ゲルシンガー氏は、「AIの導入によってデータセンターの再定義も必要になる」と述べたが、「VMworld」ではデータセンターのI/OワークロードをSmartNICで稼働させる取り組みとして「Project Monterey」が発表されている。具体的には、Dell Technologies、Hewlett Packard Enterprise、Lenovoが、Intel、NVIDIA、Pensando SystemsのSmartNICを使用したProject Montereyに基づくソリューションを提供する。
マルチクラウド分野での取り組み - クラウドのサイロを作らない
ゲルシンガー氏は、マルチクラウドについて、「これまではさまざまなテクノロジーを組み合わせて構築するものだったが、今ではビジネスを推進するプラットフォームとなっている」と述べ、マルチクラウド戦略のカギとなるソリューションとして、主要パブリッククラウドベンダーと提携して提供される「VMware Cloud on AWS」「Azure VMware Solution」を挙げた。
ヴイエムウェア チーフストラテジストの高橋洋介氏は、「マルチクラウドにおいては、クラウドがサイロ化されることで、新たな課題が生まれている。例えば、クラウドごとに運用管理の手法やツールが異なっているほか、セキュリティのポリシーも異なる。こうしたことを踏まえて、マルチクラウド環境を構築する必要がある」と述べた。
このようにインフラ・運用・セキュリティの多様化が進むマルチクラウド環境に対し、インフラ・運用・セキュリティが一貫性のある状態が「理想的なマルチクラウド」だと、高橋氏は説明した。理想的なマルチクラウドの基盤となるのが、「VMware Cloud Foundation」だ。
セキュリティ分野における取り組み - SASEを発表
ヴイエムウェアが近年、注力しているのが「セキュリティ」だ。セキュリティの戦略として、すべての製品や機能にセキュリティを内在する「Intrinsic Security(本質的なセキュリティ)」を掲げている。ゲルシンガー氏は、「アプリとデータに一貫したセキュリティを適用する必要がある。そのために、セキュリティの制御ポイントをインフラに組み込むのがヴイエムウェアのやり方」と語った。
ヴイエムウェア チーフストラテジストの本田豊氏は、「Intrinsic Security(本質的なセキュリティ)」の最初の製品が「VMware Carbon Black Cloud Workload」だと紹介した。同製品は、優先順位付けされた脆弱性レポートとワークロードの強化機能に、防御、検出、即応性を組み合わせて、仮想化、プライベート、ハイブリッドの各クラウド環境で実行されるワークロードを保護する。
「VMware Carbon Black Cloud Workload」はvSphereに統合されており、vSphere 6.5およびVMware Cloud Foundation 4.0のユーザーは「VMware Carbon Black CloudWorkload Essentialsの無償体験版」を6カ月利用できる。
加えて、新たなセキュリティの新製品として、米国のVMworldでは「VMware Secure Access Service Edge(SASE)」が発表された。同ソリューションは、「VMware SD-WANソリューション」「VMware Secure Access」「VMware Cloud Web Security」「VMware NSXファイアウォール」から構成される。
「VMworld 2020 Japan」は11月12日まで続き、同社の導入事例や製品に関するセッションを聴講することが可能だ。