富士通と東京品川病院は9月2日、新型コロナウイルス肺炎の診断に有効とされる胸部CT(Computed Tomography:コンピューター断層撮影)検査による画像診断の支援を行うAI技術の共同研究開発を同日から実施すると明らかにした。
新型コロナウイルス感染の疑いが強い患者の治療を行う際、PCR検査結果だけでなく、血液検査や胸部CT検査など、そのほかの検査結果を踏まえて総合的に診断および治療方針の決定を行う。PCR検査が陰性でも、そのほかの検査で新型コロナウイルス肺炎と診断される場合もあり、胸部CT検査による画像診断は重要な位置づけとなっているという。
肺疾患の診断では、医師が患者の胸部CT画像に映った病変部の陰影の特徴に基づき診断しているが、異常な陰影の判別だけでなく、肺全体にわたる陰影の立体的な分布状況を把握するため、患者一人あたり数百枚にもおよぶ胸部CT画像を目視で確認している。
特に、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、医師の負担を軽減し、スピーディーな診断を支援する技術が求められているほか、問診で新型コロナウイルス感染の可能性が低く、PCR検査が実施されない場合、その患者の胸部CT画像から新型コロナウイルス肺炎を見つけ出すことも重要だという。
これらの診断支援の必要性から両者は共同で、新型コロナウイルス肺炎の診断に有効な手法とされる胸部CT検査に対して、AIを活用した医師の画像診断支援技術の開発を開始。
具体的には、東京品川病院が有する過去の新型コロナウイルス肺炎の胸部CT画像データから肺の異常陰影パターンを検出して、それらのデータをAIに学習させることで新型コロナウイルス肺炎の可能性を示すAI技術を開発し、その技術の有効性を両者で検証する。
医師が新型コロナウイルス肺炎を診断する際、肺に見られる異常陰影のパターンと肺全体の異常陰影の広がり方が診断のための重要な情報となっており、異常陰影のパターンの検出は富士通研究所が開発したAIを活用して行い、CT画像上で肺を右肺末梢、右肺中枢、左肺中枢、左肺末梢の4つの領域に分割し、各領域の上下方向の陰影分布をヒストグラム化(データの分布状況を視覚的に認識可能な統計グラフの1つ)する。
これにより、三次元的な陰影の広がりを数値化し、検出された異常陰影パターンと陰影分布を用いて新型コロナウイルス肺炎を判別するAIを新たに開発。AIで新型コロナウイルス肺炎の可能性を示すことで、医師が胸部CT画像から肺炎の診断をする際、陰影の立体的な広がりを数百枚の胸部CT画像から目視で確認していた診断時間を短縮し、専門医に加え、新型コロナウイルス肺炎の診断の効率化を図る。
今後、両者は共同研究開発を通じて、新型コロナウイルス肺炎の診断に活用されるさまざまな情報を利用できる技術を確立することで、AIによる胸部CT画像診断から新型コロナウイルス肺炎の画像診断支援技術の向上を目指す考えだ。
富士通は、ヘルスケアソリューションとして同技術のサービス化を検討することに加え、電子カルテ情報とも連携させることで、胸部CT画像をもとにした医師の診断支援だけでなく、同技術の活用領域の拡大を目指す。
一方、東京品川病院は院内で実施しているさまざまな研究との融合を目指し、新型コロナウイルス肺炎の診断治療に役立てるという。