アラブ首長国連邦(UAE)の火星探査機「HOPE(ホープ)」を搭載したH2Aロケット42号機が20日午前6時58分14秒、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)から打ち上げられた。約57分後、HOPEの正常な分離に成功した。

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    火星探査機「HOPE」を搭載し打ち上げられるH2Aロケット42号機=20日午前6時58分、鹿児島県南種子町の種子島宇宙センター(三菱重工業提供)

打ち上げ後にオンラインで開かれた会見でUAEのサラ・アルアミリ先進技術担当相は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行という困難な時期に、支援により打ち上げができたことを感謝したい」と述べた。打ち上げは当初15日の予定だったが、悪天候のため延期された。

HOPEはアラブ諸国初の惑星探査機で、計画では来年2月に火星に到着する。上空2万~4万3000キロを周回し、高精度カメラ、赤外線と紫外線の分光計を使って大気や気候の詳細な理解を目指す。観測期間は火星の公転周期をカバーする約2年。来年のUAE50周年祝賀、科学者や技術者の育成なども掲げている。アラビア語名は希望を意味する「アルアマル」。

UAEのムハンマド・ビン・ラシード宇宙センターのオムラン・シャラフ・プロジェクトディレクターは「HOPEの開発は(2018年10月にH2Aで打ち上げた)地球観測衛星に比べ5倍難しかった。火星大気の全体像を、季節変化を含めて捉えようとする、前例のない取り組みになる。観測データは日本を含む科学者と共有していく。楽しみにしている」としている。

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    打ち上げ成功を喜ぶアラブ首長国連邦と三菱重工業、JAXAの関係者(三菱重工業提供)

火星探査機は、火星と地球が互いに接近する約2年ごとに、飛行距離が短くなる打ち上げの好機を迎える。接近する今年はUAEに続き、米国が探査車「パーシビアランス(不屈、忍耐)」を、中国が周回機や探査車などからなる「天問1号」を、それぞれ月内にも打ち上げる。

HOPEの打ち上げを実施した三菱重工業の阿部直彦執行役員防衛・宇宙セグメント長は、H2Aと強化型のH2B通算で45機連続の成功となったとした上で、「無事打ち上げることができ安堵している。(今年度に初号機を打ち上げる後継機の)H3ロケットへと信頼性の高さを引き継いでいく」と述べた。

国産ロケットによる海外衛星の打ち上げは4回目となった。同社は海外衛星では今後、英国の通信サービス大手インマルサット社の衛星打ち上げを2回予定している。うち1回はH3で行う。

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    火星探査機「HOPE(ホープ)」の想像図(ムハンマド・ビン・ラシード宇宙センター提供)

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