TISインテックグループのネオアクシスは4月20日、コンカーが提供する経費管理クラウド「Concur Expense」の中小企業向け導入支援サービスを開始した。

同社では、「Concur Expense」の自社利用を開始し、経費精算業務を行う全社員、承認者、経理担当者、それぞれに改善効果があり、スマートデバイスなどからの申請やペーパーレス化などによる業務の効率化に加えて、特に経理担当者の業務は約6割、申請が多い営業担当者の業務は約8割の経理精算業務時間を削減できたという。そこで、同社の担当者に業務削減の要因を聞いた。なお、取材はWeb会議にて行った。

  • 「Concur Expense」の導入効果

ソリューション事業部 営業部 浅尾健太氏

ソリューション事業部 営業部 浅尾健太氏は、「Concur Expense」を提供することになった背景について、「弊社は自社をモデルにして働き方改革の有益サービスを展開していますが、その部分は外部システムとの連携や電子帳簿保存法で先行しているコンカーさんとマッチしていました。『Concur Expense』を自社導入して、それがいいものであれば、お客様に展開しようと思っていました」と説明した。

なお、同社は2020年3月、コンカーの販売パートナーになっている。

「Concur Expense」導入前の同社経理処理の課題としては、交通費精算で定期区間を除外できない、会社に来ないと経費精算ができず、部門長も承認のために会社に来る必要がある、申請内容のチェックに時間がかかる、法改正があるとシステム改修が必要になる、勘定科目ごとに利用するシステムやワークフローが異なるケースがあり、2重入力や2重チェックが発生する、領収書の管理が煩雑、各部門の支出状況がわからないため予実管理ができないなどの課題があったという。これらを「Concur Expense」の導入で解決したという。

  • 「Concur Expense」導入前の経理処理の課題

検討期間3カ月、導入作業4-5カ月を経て、実際の運用を開したのは、2019年4月だ。導入にあたっては、システムだけでなく、運用ルールや承認プロセスも変更したという。また、電子帳簿保存法の申請も行い、領収書の電子化も同時に実現した。

経営管理部 経理担当 深見菜津美氏

「クラウドサービスのため、これまでできていたことができないこともありましたが、今までの業務に合わせてConcurを設定してしまうと、Concurのメリットが享受できなくなるため、これを機に運用をシンプルに変更しました。例えば、経費タイプを勘定科目に紐づけて管理していますが、経費タイプも極力少なくしました。また、承認ステップを減らし、従来は最大4ステップあったプロセスを、基本は上長の承認だけにしました。規定や運用を一新したので苦労する部分はありましたが、一度使ってもらえれば理解できるので、従業員からは使い勝手がよくなったといわれています」と語るのは、経営管理部 経理担当 深見菜津美氏だ。

導入にあたっては、全社員を対象にした説明会も開催した。

「最初の教育の部分は力を入れて、社員全員を対象に説明会を開催しました。Concur Expenseは割と使いやすいので、一度使ってもらえれば理解できるため、電子帳簿保存法の部分を重点に説明しました。稼働最初の月は問い合わせも多かったですが、すぐに落ち着きました。また、MicrosoftのTeamsやYammerを活用し、注意事項を社員全員で共有できるようにしました。領収書の電子化の部分は、最初は紙のまま提出したり、電子署名をし忘れるというミスもありましたので、何度もアナウンスしました。ただ、社員から面倒だという意見はなかったので、慣れれば定着する仕組みだと思います」(深見氏)

  • 「Concur Expense」のiPhoneアプリの画面

導入効果として大きいのは、営業職では、出社しなくても経費精算ができる点だ。上長も承認のために残業するといったこともなくなった。同社では、全員にiPhoneを配布しているため、移動の隙間時間に申請する社員も多いという。

また、入力する手間も削減されたという。料金を調べなくても、システムで表示される点や、行き先によっては複数の経路があり値段も異なるため、正しく入力するには、経由駅など細かな点に注意する必要があったが、乗車駅と降車駅を入力し、表示された経路候補から利用したものを選択すれば入力できるようなった。また、PASMO・Suica等の交通系ICカーの情報をカードリーダで読み込むことで、一括入力も行えるようになったという。

経理担当では、チェック業務が削減されたことが大きいという。

システム入力なのでミスが少ないほか、これまで勘定科目によって別システムを利用しなければならないため、2重チェックが発生していたが、その部分がなくなった。

ソリューション事業部 コラボレーション・ソリューション第1部 枝光紗穂(システム担当)氏

ソリューション事業部 コラボレーション・ソリューション第1部 枝光紗穂(システム担当)氏は、「監査ルールという機能があり、もし、入力忘れ等があれば警告メッセージを出すようにするなどの設定ができるため、申請の不備が減りました」と語る。

運用していてミスが多い申請に関しては、新たにチェックルールを追加して、警告メッセージを表示するようにできるため、徐々にミスを削減していくことができるという。

深見氏はそのほか、経費を見える化する機能を持っているので、各部門の上長が予実管理をできるようになったことや、アプリに領収証を撮影し電子署名を付加する機能も備わっている点もメリットだと語った。

同社は、今後、「Concur Expense」の中小企業向け導入支援サービス展開していくが、その戦略について浅尾氏は、次のように語った。

「自社導入によって効果検証ができているという強みや、承認プロセスの変更、社内規定の変更、ユーザー教育などの苦労した点を自社のノウハウとして活かして展開したいと思います。また、システムと実業務のギャップを埋めるためのテンプレートを展開して、導入支援していきたいと思います」

また、自社のDXに向けては、経理の未来予測にも活用を広げ、外部システム連携、社外からの請求書の電子化などにも取り組んでいくという。