電通国際情報サービス(ISID)のオープンイノベーションラボ(イノラボ)と東京大学大学院新領域創成科学研究科の「環境デザイン統合教育プログラム」(IEDP)は4月6日、都市・建築・ランドスケープなどの環境デザイン分野の課題解決に向けた学生の提案を先端技術を活用して社会実装し、その成果やプロセスを体系化する「社会実験構想学」の共同研究を開始したと発表した。共同研究は4月から5年間を予定しており、イノラボのエンジニア・ディレクターとIEDP教員による公開会議やワークショップなどを含む実践型教育プログラムを通じて生まれた学生提案から、複数の社会実験を企画・実施する。

両者は、本共同研究の成果を論文として発表するとともに、得られた研究成果が生かせる類似の構造を持つ社会課題や、他地域への応用・展開も検討していく予定です。

共同研究は、東京大学の教育プログラムであるIEDPと先端テクノロジーを活用したサービス開発に取り組むイノラボが連携し、大学に眠るアイデアを育て、積極的に社会に開き、実装していくことで、新たな社会課題解決のアプローチを提示することを目指す。

IEDPは2007年の開始以降「環境デザイン」の旗のもと、多彩な教員陣がそれぞれ取り組む社会課題をもとに、現地調査や実習を通した提案活動を行う演習科目「スタジオ」を主宰しており、同科目に参加した学生たちは自由な発想で未来の社会や都市像を描き、人々が楽しく住みこなすための都市空間やまちを運営する仕組み、東南アジアのインフォーマル集住地でコミュニティとともに考える建築的仕掛け、農地を身近に感じる新たなライフスタイルとその実現に向けた仕組みなど、豊かな未来をつくるための提案を生み出し続けてきたという。

昨今では、デジタルツールを当たり前に使う若者たちが未来の社会へ提案する一方、その多くが実現につながっていないものの、近年では最先端技術の活用を通してさまざまな形でアイデアの社会実装が可能になっており、提案と実装の接点をつくることが課題となっているという。

イノラボは社会課題の解決に向けて、生活者の行動をデザインし、先端技術を活用した仕組みの実装を手掛けおり、例えば街づくり・地方創生の領域では、地域貢献活動をスマートフォン向けアプリでスコア化する「AYA SCORE」の実証実験を宮崎県綾町で2019年にスタート。

住民や町に関わる人々の利他的行動を後押しし、ポジティブな行動変容を促す仕組みを検証しています。また、家具や植栽等の静物とサービスロボットの融合をテーマとする研究開発や、今後社会応用が期待されるALife(人工生命)の実証プロジェクトなども推進している。今回の共同研究では、さまざまな先端技術をユーザーが実際に体験できるサービスやアプリケーションへ実装していくイノラボの知見に、学生の課題解決のアイデアを掛け合わせ、テクノロジーの応用領域拡大に取り組む。

共同研究では、スタジオで学生が生み出すデザイン提案シーズ、IEDP担当教員がスタジオ運営経験に基づき得た知見、そしてイノラボが持つ最先端技術のシーズや社会実装のノウハウを持ち寄って社会実験を企画・実施することで、郊外の新規開発都市、都市農地などが抱える社会課題の解決に向けた新たな仕掛けを探る。

提案作成のプロセスでは、いくつかのスタジオでイノラボとIEDP教員とのパネルディスカッションに加え、イノラボのエンジニア・ディレクターによる講義や学生提案に対するアドバイス、グループワークなどを通じたインプットを行い、イノラボ・学生・教員が互いに刺激し合い、新たなアイデアを生み出す仕掛けを積極的に埋め込む。

受講学生はこうした活動に参加することで、自分たちの提案を社会に問う機会を得られ、さらにこれら一連のプロセスを記録・分析することで、社会実験の構想から実施に至る知見の体系化・理論化を図る。社会実験の企画は上記の課題にとどまらないことに加え、実施にあたっては東京大学大学院新領域創成科学研究科が位置する千葉県柏市柏の葉エリアなど、さまざまな地域を想定している。