自分で自分を管理するセルフコントロールー社会人として必須スキルの1つだろう。電車内や歩行中、大の大人なのに感情剥き出しの行動をとる人を最近は、よく見かけるようになった。American ExpressのOpen Forumの記事「8 Easy Ways To Increase Your Self-Control」がセルフコントロール(自制心)のためのアドバイスをしている。2013年と少し昔のものになるが、今なおその知見は色あせないように思う。

寄稿するのはBruna Martinuzziさん。プレゼンテーションスキルのコーチングやトレーニングで数千人をコーチしてきたというBrunaさんは、6言語を操り中国、ヨーロッパ、中東、米国、カナダとほぼ世界中ともいえる各地で企業や大学、政府や非営利団体へのトレーニングを提供している実績を持つ。文化や国が異なれば、考え方も異なるところが多いはずだがそれでもまいらずに続けられるところはやはりプロフェッショナル。Amazonには「The Leader as a Mensch: Become the Kind of Person Others Want to Follow」(Mensch/思慮分別のある人 としてのリーダー:他の人がフォローしたい人になろう)、「Presenting with Credibility: Practical Tools and Techniques for Effective Presentations 」(信頼性のあるプレゼンテーション:効果的なプレゼンテーションのための実用的なツールとテクニック )などの著書もある。

"セルフコントロール"が最も達成困難な性格(Character)であると指摘するBruna Martinuzziさん。興味深いアイオワ大学のウィリアム・ヘドコック(William Hedgcock)准教授の研究結果に言及する学内報(2012年6月のIOWA Now)へのリンクを張っている。セルコントロールする時に使われる脳の活動をMRIでスキャンして比較したときの違いから、自己制御はプールの中の水のように有限なもので、枯渇するとその力を発揮できない点に言及している。枯渇するが故に"回復"が必要なものであることが窺える。

Bruna Martinuzziさんが提案する8つは以下の通り。

1.大きな図を見る
セルフコントロールを失いそうなときは、大きな視野で物事をとらえるとよさそうだ。“木を見て森を見ず”とはよく言ったもので、目の前のことでいっぱいになっていないか?全体が見えると自己が制御不能になることはないだろう。

2.睡眠と体調管理
睡眠不足が精神に与える影響は過少評価できない。十分な睡眠がとれていないと、前頭前皮質のグルコースが枯渇し、セルフコントロールに必要なエネルギーを回せなくなる。これを修復するには眠りしかない。睡眠時間6時間以下の人と6時間以上の十分な睡眠が取れている人を比較したある実験では、倫理感にすら影響を与えることもあったそうだ。

3.リラックス
衝動的に重要な決断をして後悔したことがあるのなら、リラックスをキーワードにすべき。イリノイ大学の調査によると、"スタート" "どんどん進めて"などといった言葉を耳にすると、衝動的な意思決定を行う可能性が高いという(リラックスできない)。逆にリラックスした状態は、誘惑や瞬間的衝動がおこるのを制限するとのこと。動作を促すような言葉は、セルフコントロールに対しては逆効果。

4.短いトレーニングでOK
セルフコントロールを学ぶのに、長時間のプログラムは必要ない。しっかりした練習を短期間行って成果を感じることで、前頭前皮質に送られる血液と酸素の量が増しセルフコントロールの能力がアップするという。忙しいからといって、諦めることはなさそうだ。

5.デジタルの力を借りる
モバイルの時代、使えるデジタルツールを最大活用しよう。飽きっぽいのなら目標へのコミットを継続するようリマインドしてくれる専用のアプリがたくさんある。支出でもダイエットでも継続を支援するアプリがあるので、それを使うのも手だ。

6.自分を知る
感情のコントロールや衝動の制御なら、エモーショナルインテリジェンス(EQまたはEI)を理解しておくといいだろう。つまり、自分を知ることで感情や衝動をコントロールしようというアプローチだ。せっかちなタイプか? 一回話し始めると、止まらなくなるだろうか? 負荷がかかる環境でもフォーカスを見失わないだろうか?ーー社会人なら、自分の傾向を知り、破壊的な感情や衝動を抑えることが求められる。

7."決定疲れ"を回避する
専門家によると、大・小関係なく意思決定をすると意志の力(つまり自制心)を使い切ってしまうという。そうなると、セルフコントロールが犠牲になる。このような"決定疲れ"は、意思決定に悪い影響を与えかねない。そこで、一部のことについては迷わないようにデフォルトを決めておくことを提案している。

8.糖分を有効活用
セルフコントロールにおいて糖分は重要な役割を果たす。中でも脳、筋肉などの組織にエネルギーを運んでくれるグルコース(ブドウ糖)は重要。ブドウ糖を意識して摂取することを考えてもいいかもしれない。

セルフコントロールが利かなくなれば、本人のみならず周囲に迷惑をかけることもありそうだ。自身の体調を管理し、"回復"を挟みながら持続的、継続的な業務遂行が求められるのかもしれない。