LPI、BSDスペシャリストの認定資格試験を開始
LPI (Linux Professional Institute)は10月30日(カナダ時間)、「Linux Professional Institute Releases BSD Specialist Certification|Linux Professional Institute」において、FreeBSD・NetBSD・OpenBSDを管理するために必要となる実践的なスキルに焦点を当てた認定資格試験「BSDスペシャリスト」の開始を発表した。システム管理者やエンジニアを対象とした試験で、主に次の領域が対象となっている。
- *BSDのインストールとソフトウェア管理
- ストレージデバイスと*BSDファイルシステム
- *BSDシステム管理の基本
- *BSDネットワーク管理の基本
- UNIXの基本スキル
BSDスペシャリストに合格した認定者は、FreeBSD・NetBSD・OpenBSDで快適に作業できる技量を備えていることになる。LPIがこれまでに提供している認定に照らし合わせると、LPIC-1に相当する。既に日本からの受験者もいる。
実のところ、このニュースに驚いた方もいたのではないだろうか。これまでLPIはLinuxを中心に認定資格試験を展開してきた。*BSDに対してもLinuxと同等の認定試験を提供することは可能だが、行われてこなかった。今回、どのような経緯でLPIがBSDスペシャリスト認定を提供するに至ったのか、LPIのエグゼクティブディレクターのG. Matthew Rice氏に話を伺った。
BSDCGからLPIへ検定試験の開発と運用をバトンタッチ
BSD由来のオペレーティングシステムを対象とした検定試験には「BSD Associate」がある。BSD Certification Group (BSDCG)が試験の開発・運用を実施している検定試験だ。日本語での試験も実施されてきた。端的に話をまとめると、BSDCGからLPIへ試験が引き継がれた、というのがこの話の主な内容ということになるようだ。
BSD Associateを立ち上げて中心的に運用を行ってきた担当者らが第一線を退くことになり、試験を継続できる組織を探していたという。そこにLPIとのつながりが生まれ、最終的にBSDスペシャリストとしてLPIが試験を新たに開発して運用することになったそうだ。LPIが試験の開発・運用を行うことで、これまでよりも広いユーザーにBSD検定試験が届けられるようになると見られる。
BSDCGはBSD Associate試験の開発に厳密な手法を使っていた。現在、BSDCGでBSD Associateの開発に携わってきたメンバーはBSDスペシャリスト試験開発のアドバイザー的なポジションとして事業に協力しているようだ。
BSDスペシャリストは皮切り、さらに多くのOSS認証を提供予定
LPIはLinuxの認定試験を実施する組織というよりも、コミュニティを形成して試験の開発から運用までを行っていく非営利団体という側面が強い。ビギナーレベルの試験のみならず、プロフェッショナル向け認定試験の開発や運用も行う。コミュニティを構築しながら試験を開発していくというスタイルを取っており、「試験に合格したら終わり」ではなく、常にスキルアップを目指す場として機能しようとしている。
つまり、LPIはスキルを身につけるために勉強する場そのものであり、そうした場をコミュニティを通じて開発していく――これがLPIの姿勢だ。
当初はLinuxの認定試験を中心的に展開していたLPIだが、最近はより多くのオープンソース・ソフトウェア(OSS)を対象として認定試験を開発していくという取り組みを行っている。BSDスペシャリストはその一環ということになる。Linuxに限定されることなく他のOSSへ広く対象を広げたいLPIと、BSD Associateをよりうまく運用できる組織を探していたBSDCG、この2つの組織の需要と供給が一致したことでLPIからBSDスペシャリストが誕生したわけだ。
BSDスペシャリスト以外にも、LPIはDevOpsツールエンジニアをはじめとした他のスペシャリスト認定試験の開発、ビギナー向け認定試験などの開発も進めている。
SDスペシャリスト試験の日本語版提供は2020年
LPIは世界中で認定試験を提供しており、試験ごとに対応している言語が異なるという状況がある。LPICなど、これまで提供されている試験は当然だが、日本語で実施されている。しかし、昨年末に追加されたBSDスペシャリストの英語版以外の試験は現在開発中であり、本稿執筆時点では英語で試験を受ける必要がある。
Rice氏は、BSDスペシャリスト認定試験の日本語版について「2020年中には提供できるのではないか」と話していた。LPIが提供する認定試験は公式サイトら申し込めるが、その手順の途中で対象となる試験が対応している言語が表示される。BSDスペシャリストを日本語で受講したい場合、ここで日本語が表示されるようになるまで待つ必要がある。
LPICの時は英語版と日本語版が同時に公開されていたが、今後LPIから提供される認定試験は英語版が先行し、日本語版は2、3カ月遅れて提供される可能性がある。受験会場でびっくりしないように、申し込みを行う段階で対応言語に日本語が含まれているかをチェックしておきたい。
なお、BSDスペシャリストについては試験範囲が「BSD Specialist Objectives V1.0(JA) - LPI Wiki」に日本語で掲載されているので、参考にするとよいだろう。すでにLPIC-1を取得しているのであれば、キャリア形成の一環としてBSDスペシャリストを検討してもよいかもしれない。範囲はLPIC-1と似ており、勉強するには取り組みやすい対象だ。