NTTは8月28日、RPAの市場動向とNTTの戦略を発表。この中でNTT 代表取締役副社長 島田明氏は、NTTグループが提供するRPA「WinActor」の累計導入実績について「2014年から提供しているWinActorがこの1年で急速に普及しており、昨年度で3000社、今年は上期で4000社、年度末には5000社になる見込みだ」と語り、今年度中に5000社を突破する見込みであることを明らかにした。
同社では、現在のRPA市場の規模を800億円程度と試算しており、これをベースに計算すると35%程度のシェアを獲得したことになるという。
同氏は、WinActorが市場に受け入れられてる理由として、ソフトウェアをスキルなしで利用できることと、オンプレミスのほかクラウドでも動作可能であり、AI-OCR、研修ツールも充実し、ユーザーニーズにフレキシブルに対応できている点を挙げた。
「利用者の約半数がプログラミング経験がない人がシナリオ作成を行っており、ボトムアップの改善につながっている」(島田氏)
今後については、多言語化の推進による海外展開の加速や、クラウド化対応、それに伴う従量課金サービスの導入を進めていくという。
また、NTTグループとして、AI-OCR、音声のテキスト化、PCログ分析、チャットボットなど周辺機能を充実させ、WinActorをトリガーに働き方改革などの全社横断DX(デジタルトランスフォーメーション)に広げていく考えを示した。
今後はAI活用を推進。将来はシナリオの自動作成も
記者発表には、WinActorを開発したNTTアドバンステクノロジの取締役 AIロボティクス事業 本部長 高木康志氏も登壇。
同氏によれば、WinActorはNTT研究所が2006年にネットワーク管理の効率化のために開発された「UMS」がベースで、それが2012年からグループ会社に展開。その後、2014年に一般販売を目的に開発されたのが「WinActor」だという。現在は700社ほどが販売を行っているという。
RPAでは、現場主導で行うのか、情報システム部門を中心としたトップダウンで行うのかの議論があるが、高木氏はどちらもデメリットがあり、「現場主導と全社一括の管理機能を充実させることで、全社に改革が行き渡る」と語った。
具体的には、現場の成功体験をスピーディに浸透させることや、社員参加型で社員も意識を高めること、さらにそれにトップダウン主導の横展開を行うことが成功パターンだとした。
また、現場主導だと部分最適で終わるという懸念に関しては「成功パターンを横展開していくと同時に標準化も進んでいく」と、全社に広げることで全体最適が進むという考えも示した。
今後の機能強化については、来月からクラウド型オンデマンドサービス「WinActor Cast on Call」(従量制)を展開するほか、それにともない、オンプレミス向けの管理機能を提供する「WinDirector」と同等の機能を持つクラウド版の「WinActor Manager on Cloud」も提供する。
また、各企業や自治体共通の業務については同社がシナリオを作成し、クラウドからダウンロードして使えるようにするという。
さらに、AIの導入も進め、チャットボットやメールの文書チェック、画像認識、業務を分析して自動でシナリオを作成機能なども提供。また、オンプレミス環境をクラウドに移行する業務をRPAで行えるようにしていくという。
10月からマーケットプレイス
NTTデータ 社会基盤ソリューション事業本部 ソーシャルイノベーション事業部 デジタルソリューション統括部 RPAソリューション担当 課長 中川拓也氏は、WinActorのエコシステム構築について説明。
同氏は、現在のRPA市場について「単なる自動化だけでなく、DXが起きる状況が生まれている」と、市場の広がりを指摘し、MM総研の調査データをもとに「RPAはスマホと同様に一人1台の時代になる」と、今後、市場が拡大していくとの見通しを語った。
また、RPA市場での先駆者であった金融機関がRPAのコンサルティングサービスを行う、業界の競合企業がで協同で取り組む、学校教育の一環でWinActorを教えるなど、新たな動きもでているという。
同氏はWinActorのエコシステムの拡大に向けては、検定制度の創設、全国にトレーニングセンターの設置(現在10カ所)、「横断コミュティプラットフォーム」を10月からサービスを開始すると説明。
このプラットフォームでは、ベストプラクティスの共有、ベストプラクティスとソリューションをセットした商品の提供、ポイント獲得・ランク認定などを行う。
同時に、「DXマーケットプレイス」も開始する。これはパートナーが関連商品を提供できる場所で、NTTデータが動作保証などの側面支援を行うという。