フランスの首都パリから約8kmの距離に位置し、立地の良さから多くの企業が集積するリュエイユ=マルメゾンに本社を構える仏Schneider Electric(シュナイダーエレクトリック)。今回、本社ビルに加え、世界経済フォーラムにおいて「世界で最も先進的な9つのモデル拠点」に選定されたスマートファクトリーを取材した。本稿では、本社ビル「HIVE」を紹介する。
高度にエネルギー管理された本社ビル「HIVE」
まずは、シュナイダーエレクトリックの事業について整理しておこう。同社のポートフォリオは「Buildings」(ビル)、「Data Center」(データセンター)、「Industry」(産業)、「Energy & Infrastructures」(電力とインフラ)のエネルギーマネジメントとオートメーションを事業の根本に据えている。
日本ではデータセンター事業の印象が目立つものの、グローバルの売上比率はBuildingsが39%、Industryが29%、Energy & Infrastructuresが18%、Data Centerが14%と、世界ではBEMS(Building Energy Management System)などビル管理や産業向けソリューションで多くの成功事例を持つ企業としての認知が高い。2018年の売上高は257億ユーロ(日本円換算で約3兆円超)、地域別の比率はAPACが29%、北米が28%、ヨーロッパが27%、そのほかの地域が16%となっている。
本社ビルは、同社グループにおけるエネルギーソリューションのショーケースという意味を込め「HIVE」(The Hall of Innovation and Energy Showcase)と呼び、延床面積3万5000平方メートル、約2000人の従業員を抱え、年間約2万人の顧客が訪問する基幹ビルだ。
太陽光発電システムや地熱発電をはじめとしたエネルギー機器に加え、IoTプラットフォーム「EcoStruxure」(エコストラクチャ)を導入し、省エネルギー化に取り組んでいる。
余談だが「HIVE=ミツバチの巣箱」にちなみ、生物多様性の観点から実際に社屋ではミツバチを飼育しており、残念ながら悪天候の影響で写真はないものの、年間300kgのハチミツを生産し、従業員に配布しているという。
Schneider Electric Energy ManagerのRegis Martin氏は「この建物は英保険会社のAviva(注:同社傘下のアヴィバではない)が所有しており、われわれは10年前に入居し、自社のソリューションを導入しつつ、昨今のスマートビルと同等レベルのエネルギーコストの削減と省エネルギー化を進めている」と説明する。
特にこれといった設備がなかった空きビルを活用し、エネルギー設備に加え、EcoStruxure、スマートセンサなど同社のソリューションを導入することで、各フロアのエネルギー消費量や温度などを可視化している。
本社ビルへの各種設備・ソリューションの導入により、同社は2008年に年間320kWh/平方メートルだったエネルギー消費量を、2018年には同63kWh/平方メートルと約6分の1にまで低減させており、2020年には同50kWh/平方メートルを計画している。
すでに、エネルギーパフォーマンスを可視化し、その改善によるコスト削減を実現するための国際規格であるISO 50001をビルとしては世界で初めて取得しているほか、環境マネジメントシステムに関する国際規格のISO 14001などを取得済みだ。