NECは2月1日、製造業における製造ラインの自動化を支援するため、「ロボット導入トータルサポートパッケージ」を販売開始するとともに、昨年6月に同社 玉川事業場(玉川事業場 玉川ソリューションセンター) 玉川ソリューションセンター内に開設した「NEC DX Factory共創スペース」で、パッケージの一部を体験できるように強化した。

「NEC DX Factory」は、「人とロボットの協調」による次世代ものづくりがコンセプトで、顧客との新たなアイデアの共創、先進技術の検証、NECグループ内への適用を目的としている。

「ロボット導入トータルサポートパッケージ」は、デンソーウェーブをはじめとするロボットメーカーと連携するとともに、NECグループ内で培ったロボット導入のノウハウを活かし、「ロボット導入コンサルティング、人作業を含むライン設計」、「ロボットシステムに必要な構成要素(ロボット、ハンド・センサーやネジ締め・樹脂塗布等を行う自動機搭載ユニット等)」、「ロボット稼働状況管理システム(製造業向けのIoT基盤「NEC Industrial IoT Platform」のアプリケーションの一つ)」の3つを提供する。価格は、標準的なケースで1200万円程度からだという。

  • 「ロボット導入トータルサポートパッケージ」主な構成要素一覧

「ロボット導入トータルサポートパッケージ」は、生産ラインへのロボット導入と運用にあたり、導入コンサルティング、人作業を含むライン設計、ロボットおよび関連する周辺設備、稼働の見える化・分析を行うITサービスまでを、包括的に提供するもの。

  • 包括的なパッケージとして提供

NEC ものづくりソリューション本部 主幹 北野芳直氏

NEC ものづくりソリューション本部 主幹 北野芳直氏は、「ロボット導入は、スキルや経験値の不足、ロボット化できる工程が限定される、人手による作業実績の収集という3つの課題がある。ロボット導入トータルサポートパッケージでこの3つの課題を解決する」と説明する。

  • 3つの課題を解決

また、NEC 執行役員 松下裕氏は、「NECでは、生産改革に15年以上携わってきた人間を匠と呼んでおり、現在40数名いる。以前は、そのノウハウは門外不出だったが、2012年からは、そのノウハウをお客様の生産革新に活かしている。今回のパッケージでも、ライン設計やロボットとの協創などの部分で、匠の人間も加わって検討していく。こういった部分は他社にはない部分だ。たとえば、ロボット導入に6カ月程度かかるとすれば、このうち4カ月程度は、ライン設計や周辺装置の段取りにかかっている。今回のパッケージによって、その4カ月がいらなくなる」と、今回のパッケージのメリットを語った。

  • 3つの課題を解決

NECでは、2021年度までの3年間で、「NEC DX Factory」関連で1500億円の売上を目指しており、今回のパッケージでこのうちの150億円をカバーする計画だ。

松下氏は「NEC DX Factory」について、「IoTは設備や一部のデータを集めて見える化するものだが、NEC DX Factoryは人、もの、設備の動きをすべての工程でデジタル化し、AIで分析し、製造現場にフィードバックすることで、製造業の課題解決に貢献するものだ。製造業では自動化への期待が高く、ロボットの導入が進んでいる、ただ、ロボットの導入においては、ライン設計や人とロボットの協創に相当な時間をかけている。この部分は、これからロボットを導入していこうと考えている企業にとって高い壁になる。それを解決するのが『ロボット導入トータルサポートパッケージ』だ。パッケージでは、現場改善のためのコンサルティング、人とロボット協創の設計のほか、センサーなどの周辺装置も含めて提供する。NEC DX Factoryで、IT+OTの製造業すべての領域をサポートしていく」と意気込みを語った。

NEC DX Factory共創スペース

NECでは、今回の「ロボット導入トータルサポートパッケージ」に提供にあわせ、パッケージの一部を体験できるように玉川事業場の「NEC DX Factory共創スペース」を強化した。

  • 強化された「NEC DX Factory共創スペース」

具体的には、AI映像作業解析、音声対話ロボット「PaPeRo」、ロボット導入トータルパッケージなどが新たに追加された。

AI映像作業解析は、人の作業を映像解析し、作業の手順や内容が正しいかや、チョコ停(短時間の停止が何度も繰り返し発生すること)を迅速にデバックする機能を提供。また、作業員の顔認証を行い、作業ができるスキルをもった人間であるかを確認。スキルがない場合は、作業台の扉を解錠しないこともできる。

  • 作業台の上に設置されたAI映像作業解析装置

  • 映像をAIで解析することで、作業工程が正しいかを判定したり、作業時間を測定したりする

音声対話ロボット「PaPeRo」では、ロボットとの会話により、どの部品を装着すべきかの指示を仰いだり、作業完了を知らせることで、次工程への展開をPaPeRoが行うなどの協働作業が行える。

  • ロボットとの協働作業を行うためのシステム

ロボット導入トータルパッケージでは、ものづくりIoT基盤「NEC Industrial IoT Platform」によりロボットや自動機のデータを収集し、ロボット稼働状況と製品の品質の見える化・分析・制御を実現している。

  • ロボット導入トータルパッケージ

  • 生産データを見える化

そのほか、ウェアラブルデバイスを活用して心拍変動データから感情を可視化する「NEC 感情分析ソリューション」を用いて、「PaPeRo i」が人の体調や感情を汲み取り声掛けを行う。さらにこのデータを分析し、工程設計の改善に繋げるという。

  • 作業員が装着するウェアラブルデバイス

なお、「NEC DX Factory共創スペース」の内容は、2/6~8に東京ビッグサイトで開催される「第30回 設計・製造ソリューション展(DMS)」で展示するという。

松下氏は「NEC DX Factory共創スペース」について、「予約はほぼ埋まっている状況だ。この施設はお客様に体験いただくだけでなく、エコシステムにおける検証にも利用しているので、効果は非常に高い。昨日、NECは4半期決算の増収・増益を発表したが、NEC DX Factoryを中心とする製造業の領域も好調だ」と、大きな成果が出ていることをアピールした。