数値や文字列、写真や音声に映像。デジタル化されたデータから有意な特徴を抽出する機械学習は、適用する場所から新しい発見を導く。AIを活用した技術開発が様々な分野で進められており、それらの分野を担う新しい人材の育成は可能性を広げていくことにつながる。11日、不満データを収集する「不満買取センター」を運営するInsight Tech(インサイトテック)と国立大学法人九州工業大学(以下、九工大)が、機械学習の技術者養成プログラムで連携することを発表した。
同社が「不満買取センター」で培ったデータを文部科学省主催のプログラム「enPiT」を通じて九工大の知能情報工学科に無償提供する。九工大では、そのデータを教材に学生がAIを使った様々なプロジェクトに取り組み機械学習の技術の向上を目指す。
Insight Techは、Webサービス及びスマートフォンアプリを通して一般人から不満を買い取るサービス「不満買取センター」を2015年3月から行っている。同サービスは年末にその年の投稿で最も多かった不満ワードを発表する「2018年のふまんワード」などでも話題になっており、現在では累計40万人以上の会員から、累計1,000万件の不満のデータを買い取るというユニークな試みだ。
同社はこれらの情報の中から、特定の個人につながる情報を含まない約525万件の「不満」と不満を投稿したユーザ約10万人のプロフィール情報を無償で九工大知能情報工学科における「enPiT」のプロジェクトに提供する。
「enPiT」は、成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成の略で、情報技術を高度に活用して社会の具体的な課題を解決できる人材の育成を産学協働で行うことを目的としており、ビッグデータ・AI、セキュリティ、組込みシステム、ビジネスシステムデザインの4つの情報技術分野で実践的なPBL(Problem Based Learning)学習の教育プログラムのフレームワークを提供している。
今回、九工大が取り組むプロジェクトは、「ユーザに楽しんで貰う共感サービス」や「不満データの分析手法の提案」、「不満の重要度」など5つ。
チーム取り組みプロジェクト取り組み概要
1 ユーザに楽しんで貰う共感サービス
コンテンツベースフィルタリングにより、自分に似た不満を抽出し、共感や解決策の探索をする取り組み
2 不満データの分析手法の提案数多くのテキストを読む事の煩雑さの解消に向け、テキストマイニングによる回答群全体の傾向把握・多数派意見の抽出
3 不満の重要度による分類購入頻度(企業利益)に影響を及ぼす重要な不満の判断に向けた、不満の重要度推定
4 不満度評価優先課題の明確化に向け、感情極性辞書を用いた不満投稿の不満度の推定
5 不満買取センター自動タグ分類システムの構築機械学習を用いて、不満の内容から投稿カテゴリの推定
プロジェクトに対して情報工学部長 梶原誠司氏は「学生がリアルなデータを扱った機械学習やPBL演習を実施することができた」と今回の連携に対する手応えを述べている。