KDDIは11月15日、富士登山の遭難者救助を目的に4G LTEのモバイル通信ネットワークを活用した自律飛行する山岳用ドローンと、位置情報通知・監視サービス、高精細気象予測システムを活用したドローン山岳救助支援システムの実証実験 に成功したほか、ウェザーニューズとドローン向け高精細気象予測システムを開発したと発表した。
登山中の遭難者救助において、遭難位置や現場状況の把握が困難なことによる救助に要する時間の長期化や、天候不良による救助不可などの課題があり、遭難者の居場所の特定から遭難場所の状況確認を行うことで、救助のスピード向上と効率化を図るという。実証実験は静岡県御殿場市、ヤマップ、ウェザーニューズの協力のもと実施し、2019年の富士山開山期間での実運用に向けて取り組んでいく。
実証実験は2018年10月25日に富士山5合目において、(1)位置情報通知デバイスを持った登山者役が遭難、(2)登山者の家族が登山者の位置情報を確認し遭難を把握し、ドローンによる捜索を依頼、(3)高精細気象予測システムを元にドローンの飛行判断、飛行経路を設定、(4)自律飛行する山岳用ドローンが急行、(5)遭難者発見、状況確認の手順で行った。
各社の役割として、KDDIはスマートドローンプラットフォームと山岳用ドローンの提供、御殿場市は実証実験の場所の手配・調整、ヤマップは置情報通知・監視サービスの提供、ウェザーニューズは高精細気象予測システムの提供をそれぞれ担った。
また、11月15日に御殿場市とKDDIは5GやIoTを活用した地域活性化を目的とした、包括連携協定を締結しており、5G時代を見据え、包括連携協定を通じてドローン・IoTなどの先端技術やノウハウを活用し、安心・安全な富士登山の実現やサービスの共創を推進していく。
具体的には「士登山の安心・安全への取り組み事項」「観光振興・産業振興に関する事項」「災害時の連携に関する事項」「先進的な情報通信技術を利用した教育に関する事項」「地域社会の活性化に関する事項」も取り組む。
ウェザーニュースとはドローン向け高精細気象予測システムを開発
一方、11月15日にKDDIとウェザーニューズは、ドローンを使用する事業者向けにドローン運航のサポートを目的として、高精細気象予測システムを開発した。同システムはKDDIが構築する「スマートドローンプラットフォーム」において同日から利用が可能となっている。
同システムは、両社の協業で基地局に設置している全国3000カ所の気象観測装置「ソラテナ」や、ウェザーニューズが独自に収集している全国1万カ所の気象データなどを活用することで開発されたシステム。ドローンを運航する上で、必須となる気象情報を業界初だという250mメッシュ、高度10m単位で情報提供することで、ドローンを使用する事業者をサポートする。
2015年12月から2018年9月に発生したドローン墜落などの事故158件のうち、強風や雨など気象に起因した事故は約15%にに達し、従来のドローン向け気象情報は2kmメッシュ、高さ50m単位が主流だったが、安全運航のため、よりきめ細かい気象予測が求められているという。さらに、ドローンが従来の気象情報をもとに運航し、危険な気象エリアを回避しようとした場合、ドローンは大きな迂回が必要となり、バッテリーなどに大きな負荷がかかるなど課題がある。
同システムはそのような迂回を最小限に止めることができるほか、事前に飛行可能ルートの選択肢を多く提供することで、ドローン運航の最適化に寄与するほか、上空150mまでの風予測もピンポイントに10分間隔で確認できるため、気象要因による事故の予防につながるとしている。
同システムを活用することで、例えば人手不足が深刻な農業分野において、ドローンによる農薬散布時に風予測から区域外への農薬飛散を防げるという。
また、全国各地の気象情報をピンポイントで提供するため工事事業者がドローンを活用したインフラ設備などの点検時や測量を行う際、災害現場で建物の倒壊、土砂崩れなどの恐れがある危険な場所での状況確認や捜索活動を行う際に、ドローン運航のサポートを通じて、安全面・コスト面・スピード面などで貢献するとしている。今後、両社では工事事業者や農業、災害などの気象ソリューションに活用していく考えだ。