NTT東日本は11月14日、中小企業を対象にした工場向けのIoTパッケージを11月21日から提供すると発表した。価格は初期費用が132万円、月額使用料が29,900円(いずれも税別で工事費、回線使用料、プロバイダ料は別途)。
工場向けIoTパッケージは、工場に設置されている製造機器の異常を検知するためのもので、パトライトの信号と監視カメラによって検知する。パッケージは、センサー装置やネットワークカメラなどのIoTデバイスと、データ可視化用のIoTクラウド、IoTセキュリティ、IoTゲートウェイであるWi-Fiに加え、それらの運用サポートをセットにしたもの。
パトライトは、機器に取り付けられている信号灯や回転灯で、機器の状態を赤、黄色、緑等のランプで知らせる。通常は人の目で確認するが、パッケージでは、この信号をWi-Fiを通してクラウドにアップすることで、担当者に異常をメールで知らせる。機器には、ずっと人が張り付いているわけではなく、プログラムで自動化しているケースもある。それを定期的に巡回することで異常を確認するが、すべての事象に即座に対応することは難しい。今回のパッケージは、機器の状態をメールで担当者に通知できるようにすることで、異常に対して迅速に対応することを可能にする。
一方の監視カメラは、ドライブレコーダーのように、機器の異常が発生した時点の前後5分間を常時記録し、異常時の原因究明に役立てることができる。
今回のパッケージは、パトライトとの協業により提供され、機器からパトライトへの信号を無線で飛ばすという方法を採用することで低価格を実現した。パトライトは、国内の信号灯の70%のシェアをもつという。
まず、パトライトの先端に取り付けられたセンサーにより、パトライトに送られた信号を「AirGRID」という通信方式で、工場内に設置したIoTゲートウェイに収集。これをWi-Fiアクセスポイントでクラウドにアップする。IoTゲートウェイには30の機器からのデータを収集できるという。
NTT東日本では、埼玉県のトーメックス/友栄塗装および横浜市の協立金属の3工場で1年間にわたってトライアルを実施。その結果を踏まえ、今回、販売を開始する。
NTT東日本 経営企画部 営業戦略推進室 担当部長 酒井大雅氏は、「中小企業は、従業員の確保と事業継承という課題を抱えており、これをITやIoTで解決していく必要がある。ただ、運用管理のしやすさや保守サポートの問題があり、IT専任者がいないため、効果を出せずに終わるのではないかという懸念があり、導入に至っていない。これに対し、工場の方に使ってもらえるシステムを開発し、1年かけてトライアルし、本当に成果がでるのか、サービスが提供できるのかを検討してきた。今回のパッケージは運用サポートをセットにしているのが大きなポイントで、設定変更、登録、保守等を代行する。このシステムによって、IoTの裾野を広げていきたい」と語った。
実証実験を行ったトーメックス 常務執行役員 浅子英一氏によれば、工場向けIoTパッケージにより、遠隔から異常停止を早期発見でき、巡回がなくなったことで効率化し、機械の稼働率が4%向上し、120万円の利益増につながったという。
工場では現在、少量多品種に対応する必要性があり、指定したプログラム(作業)の終了をいち早く検知し、次の作業の準備をする必要があるが、信号灯によりプログラムの終了も検知可能なため、それを担当者にメールで通知することで、より稼働率を上げることが可能になるという。
今回のシステムはパトライトが取り付けられる機器を対象にするが、NTT東日本では、信号灯がつけられない機器にも別の方法での対応を検討するほか、PoC向けにレンタルキッドも用意しているという。
なお、132万円は1つの機器の監視の値段だが、10個に増やした場合でも初期費用は200万円以内に抑えることが可能だという。