日本電気(以下、NEC)は16日、水戸市、NECソリューションイノベータとともに、AIを活用し市で取り扱う伝票処理の自動化による職員の作業効率化、および内部統制の強化を図る実証実験を開始したことを発表した。
この実証は、水戸市が保有する財務会計システム等の業務システムで扱うビッグデータに対し、NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」および、NECソリューションイノベータの自治体業務ノウハウを組み合わせて、支払伝票の入力項目を自動判定するとともに業務の全件監査を行うもの。
財務会計システム入力時の人為的ミスを抑制するために、NEC the WISEの1つであるテキスト含意認識技術を活用し、財務会計システムに入力する支払伝票の件名から、市が定める費用科目や各種区分の自動判定を行う。これにより、現在職員が行っている年間約15万件の支払伝票処理において、職員が伝票を修正して再提出する作業や支払い手続き遅延の低減を目指すという。
なお、昨年度一部のデータで実施した事前調査では費用科目を97%の精度で、また、経験の浅い職員には判断の難しい入力項目である源泉徴収区分を98%の精度で、それぞれ判定できたということだ。
また、NEC the WISEの1つである異種混合学習技術等を活用し、行政事務システムのデータを分析することで人手ではできなかった全件監査を実現する実証を行う。従来の監査業務は紙の証跡をベースとしたサンプリング監査が中心であったが、同実証では監査専用システムを構築し、データベース内の全会計データを日次で分析することで、処理遅延の警告や金額の異常検出等を行う。
これにより、支払伝票の起票漏れや、手続きのミスを低減するとともに、財務会計データの異常検知による不正会計・不正経理の監視および抑止など、「予防的監査」や全庁業務の日常的モニタリングの実現を目指す。
さらに、財務会計システムに蓄積された過去の支出実績データに対して時系列で分析を行い、予算編成や資金計画の精度を高める実証を行う。同実証では最新の時系列分析アルゴリズムを用いて、事業別の次年度予算額の最適値の推定や、所属別に翌月の支出額の予測を行い、事業計画の最適化を図るとしている。