富士通研究所は、中国の富士通研究開発中心有限公司と共同で、手のひら静脈と顔情報のみで本人を特定し、非接触で認証できる生体認証融合技術を開発したと発表した。

手のひら静脈認証は、銀行ATMや入退室管理、PCなどの個人利用端末へのアクセス管理などで主に活用されているが、数万人規模の利用者の手のひら静脈が登録されている場合、比較照合を効率的に行うために、カードなどのほかの情報を入力することでデータの絞り込みを行ってきた。今後、100万人規模の利用が想定される実店舗での決済へと利用範囲を拡大するには、非接触によるクリーンな環境で、かつ利用の負担を感じさせないより簡便な環境での認証が求められるという。

そこで同社は今回、決済端末やその付近に設置したカメラを使い、端末操作中に自然に顔画像を取得し照合対象者を絞り込み、利用者は手のひらを端末にかざすだけでスムーズな決済が可能な技術を開発した。これにより、IDレスの手ぶらでの決済が可能となる。

顔認証においては、顔の向きや表情の変化などにも対応する高精度な特徴抽出を実現するための複雑な仕組みを構築する必要があるが、処理時間が増大するという課題がある。今回富士通研究所では、精度を落とさずに複雑な仕組みを簡易的に模擬するアルゴリズムを開発し、処理サイズを約10分の1へ軽量化することに成功した。

決済端末利用中の自然な動作の中でカメラから取得できる顔情報を利用して、登録されている100万人規模のデータベースの中から類似するグループに絞り込み、決済時など実際に認証が必要な時に、利用者が手のひらをかざすことで、絞り込んだグループから1人を特定する。

  • 顔情報で照合対象者を選別して手のひら静脈で本人特定する流れ

また、手のひらをかざす操作で静脈のデータが一部取得できなかった場合でも、顔情報で認証に必要な情報が補てんできるため、2つの生体情報を利用することによる認証の安定性を向上できるという。

さらに、手のひら静脈と顔情報の処理を分離することで認証サーバへの負荷を軽減できるという。

富士通研究所では、2020年度中の実用化を目指していく。