AGCは、ジンズが開発した従業員向け集中スペース「Think Lab」を、東京本社内に設置。オフィスワーカーの生産性向上に取り組んでいる。
メガネ販売を手掛けるジンズ(JiNS)では、眼の動きにより生じる電位変化を3点式眼電位センサーで計測、姿勢を6軸センサー(加速度、ジャイロ)で検知し、瞬きの回数、強さ、姿勢の状態から集中度や眠気の可能性を推測計測するメガネ型ウエアラブルデバイス「JINS MEME」を開発し、人はどんなときに集中できるかを研究してきた。
その成果を活かして、ジンズが昨年の12月1日に東京飯田橋にオープンしたのが、「DEEP THINK」を生み出す会員制ワークスペース「Think Lab」だ。AGCは今回、一般企業としては初めて、「Think Lab」をオフィス内に設置した。
ジンズ Think Labプロジェクトリーダー 井上一鷹氏は、「個人の集中とコミュニケーションの両方を上げないとイノベーションは起こらないが、これまで日本では、コミュニケーションばかりやってきた。しっかり一人でものを考える環境が足りない」と、「Think Lab」を創り出した背景を説明した。
「Think Lab」では、姿勢、スマホアプリ、植物最適配置(視覚)、ハイレゾ音源(聴覚)、香り(嗅覚)の5つのポイントで集中力をアップさせている。
姿勢では、アイデアを創出する場合は上向き、ロジカルシンキングする場合は下向きの姿勢が向いているという。
AGCの「Think Lab」は、視線が上向き、下向きになる席をそれぞれ設置し、合計12席設けた。
植物最適配置は、ストレスがパフォーマンスが上がる状態になり、ハイレゾ音源は、高周波の音も提供することでリフレッシュし、発想に結びつくという。
そして、香りはやる気スイッチを入れるきっかけをつくる効果があり、AGCではヒノキや柑橘系の香りを利用している。
スマホアプリは、自分の集中する時間を予約するためのアプリで、今後導入する予定だ。
「スケジュールは会議から埋まっていき、個人の作業時間は他の人から見ると空時間と捉えられる。しかし、集中するためには、自分の時間をしっかり確保する必要がある。また、何時までに何をやるということを予め決めてから行うことが、運用上重要になる」と、井上氏はアプリの果たす役割を説明した。
テーマは「時間の価値の最大化
AGCが「Think Lab」を設置した背景は、2011年から4年間の業績低迷がある。そこで同社は、「2025年のありたい姿」を定義し、戦略事業拡大への取組みなどの成長戦略の実行に加え、個々人の力を最大限に引き出すための働き方改革に取り組んでいる。テーマは「時間価値の最大化」だ。
「もともとわれわれは少数精鋭主義で、自ら考え行動する会社であったが、それが受身型になりすぎたという反省がある。自ら考え行動する風土を取り戻そうということで、改革に取り組んだ」(AGC 専務取締役CFO 宮地伸二氏)
時間の価値の最大化のために同社が利用しているのが、動態分析システムアプリ「スマートロガー」だ。このアプリは、いつ、だれが、どこで、何をしているかを把握するためのツールで、スマートウォッチ、スマートフォン、スマートグラスなどのデバイスを活用して、工場の作業者やオフィスワーカーの業務時間を収集する。同社ではここで得られたデータを分析することで、働き方改善につなげ、収益力や競争力向上に役立てている。
同社はこのしくみを利用し、工場の生産性向上を図り、成果をおさめてきた。「Think Lab」の導入は工場改革に続く、オフィスワーカー改革のために設置したものだ。
今後は、「スマートロガー」と「JINS MEME」を使って、「Think Lab」における集中度の変化を測定。それを分析することで、オフィスワーカーの生産性向上に取り組んでいくという。