米ガートナーは8月20日(現地時間)、「先進テクノロジのハイプ・サイクル：2018年」を発表した。同ハイプ・サイクルは、2000を超えるテクノロジーを分析した上で知見を抽出し、35の先進テクノロジーおよび5つのトレンドとして簡潔にまとめ、提示したもの。今後5～10年にわたり、高度な競争優位性をもたらす可能性が高いテクノロジーに注目しているという。

同ハイプ・サイクルでは、5つの先進テクノロジー・トレンドとして、「AIの民主化」「エコシステムのデジタル化」「DIY(自己流)バイオハッキング」「透過的なイマーシブ・スペース」「ユビキタスなインフラストラクチャ」を挙げている。

  • 先進テクノロジのハイプ・サイクル：2018年 資料:ガートナー

AIの民主化

AIテクノロジーは今後10年間でほぼどこにでも存在するようになるだろうとしており、AIテクノロジーを早期に採用した企業は、新たな状況に適応し、未知の問題を解消できるようになるという。今後、AIテクノロジーが一般に利用されるようになって「AIの民主化」が起こり、クラウド・コンピューティングや「作り手」のコミュニティ、オープンソースといった動向やトレンドが発展し、最終的にAIは誰もが使えるものになると予測している。

このトレンドは、AI PaaS(サービスとしてのAIプラットフォーム)、汎用AI、自律走行(レベル4/5)、自律モバイル・ロボット、会話型AIプラットフォーム、ディープ・ニューラル・ネット(ディープ・ラーニング)、空飛ぶ自律走行車、スマート・ロボット、仮想アシスタントなどのテクノロジーによって実現されるという。

エコシステムのデジタル化

先進テクノロジーはその基盤の革新を必要とし、この基盤が、十分な量のデータ、高度なコンピューティング・パワー、ユビキタスに対応したエコシステムを提供する。コンパートメント化(区分) された技術インフラを、エコシステムに対応したプラットフォームへ革新させることで、人とテクノロジを橋渡しするまったく新しいビジネスモデルの基盤を形成するという。

このトレンドは、ブロックチェーン、ブロックチェーンによるデータ・セキュリティ、デジタル・ツイン、IoT(モノのインターネット) プラットフォーム、ナレッジ・グラフなどのテクノロジーによって実現されるとしている。

DIY(自己流)バイオハッキング

あと10年もすれば、人類は「トランスヒューマン」時代に突入し、生活スタイル、関心事、健康上のニーズに応じて、バイオハッキング(遺伝子実験) が可能になるという。

バイオハッキングは、「テクノロジの強化」「ニュートリゲノミクス (栄養ゲノム学)」「実験生物学」「グラインダーによるバイオハッキング(人体への電子機器の埋め込み)」という4つのカテゴリに分類される。

このトレンドは、バイオチップ、バイオ技術(培養組織／人工生体組織)、ブレイン・コンピュータ・インタフェース、拡張現実(AR)、複合現実(MR)、スマート・ファブリックなどのテクノロジーによって実現されるとしている。

透過的なイマーシブ・スペース

テクノロジーは今後もさらにPeople Centric(人中心)の原則にのっとったものとなり、人、ビジネス、モノが透過的に関係するレベルに至ると思われ、テクノロジーの適用範囲が広がり、われわれが活動する生活空間やワークスペースがスマート化されるとしている。

このトレンドは、4Dプリンティング、コネクテッド・ホーム、エッジAI、自己修復システム・テクノロジー、シリコン負極電池、スマート・ダスト、スマート・ワークスペース、立体ホログラフィック・ディスプレイなどのテクノロジーによって実現されるとしている。

ユビキタスなインフラストラクチャ

インフラストラクチャはもはや組織の「お荷物」でも、目標の達成を阻むものでもないという。その理由としては、クラウド・コンピューティングとそれに類する多くのテクノロジーが登場し大衆化したことで、時間を問わずに利用可能な、制限のないインフラストラクチャ・コンピューティング環境が実現したことが挙げられている。

このトレンドは、5G、カーボン・ナノチューブ、ディープ・ニューラル・ネットワーク向けASIC、ニューロモルフィック・ハードウェア、量子コンピューティングなどのテクノロジーによって実現されるとしている。

ユビキタスなインフラストラクチャを支えるテクノロジーは「過度な期待」のピークに達しつつあり、ハイプ・サイクル上を急速に進んでおり、特に5Gとディープ・ニューラル・ネットワーク向けASICは、今後2～5年間で生産性の安定期に達すると見込まれるという。