KDDIは6月7日、都内で記者会見を開き、グローバルに事業展開を図る顧客にIoTの通信接続からサービス展開、データ分析まで提供する「IoT世界基盤」に加え、日立製作所と同基盤において連携すると発表した。

  • 「IoT世界基盤」のイメージ

    「IoT世界基盤」のイメージ

国内外で拡大するIoT市場を見据えたプラットフォーム

2020年にIoT市場規模は国内で14兆円、海外で247兆円と拡大する一方で、グローバルで事業展開する企業が海外でIoT機器を利用する際は、国内からのローミング接続に依存するか、各国の通信キャリアと個別交渉し回線契約を行う必要があり、IoT利用の入口である回線管理を日本国内と同等に行うことが困難な状況だという。

KDDIは、2016年にトヨタ自動車と自動車の「つながる化」を推進するため、国ごとに仕様が異なる車載通信機をグローバルで共通化するグローバル通信プラットフォームの構築を発表。機器に内蔵されたSIMの設定情報を遠隔操作により書き換え、KDDIが選定した現地キャリアへの直接接続を可能とし、通信キャリアごとに異なるIoT管理環境を意識することなく統合的に管理を可能としている。

KDDI 取締役執行役員常務の森敬一氏は、同基盤について「海外におけるIoTの通信接続からサービス展開、データ分析まで提供できる。特徴としてIoTの『世界への拡がり』『市場の拡がり』『価値の拡がり』の3つに対応することが挙げられる」と説明した。

  • KDDI 取締役執行役員常務の森敬一氏

    KDDI 取締役執行役員常務の森敬一氏

今回、発表したIoT世界基盤は従来の自動車に加え、産業機械や建設機械など、さまざまなモノの通信接続や課金の統合管理が可能となり、ユーザーは低価格かつ高品質の通信を利用できるという。

主な特徴は「日本にいながら世界中のIoTデバイスを管理/監視可能」「1つのeSIMで各国の適切な料金・通信品質のキャリアと接続可能」「導入前・後のグローバルによる一括サポート」の3点となる。

また、IoT世界基盤の核となるグローバル通信プラットフォームには日立の技術を採用している。各国における通信事業者の異なるプラットフォームを統合監視し、回線や課金の管理、キャリアの切替などを提供する。

  • 「KDDIグローバル通信プラットフォーム」の管理画面

    グローバル通信プラットフォームの管理画面

さらに、通信接続の提供に加え、KDDIやパートナー企業のIoTプラットフォームと連携することで、ユーザーのIoTサービス提供からデータ分析までサポートし、グローバルで経営の見える化などを支援する。

具体的には「KDDI IoTクラウド Standard」など、同社の提供するIoTプラットフォームと連携するほか、今後の市場の拡大においては日立が提供するIoTプラットフォーム「Lumada」と連携することで、各業界の特徴に合ったIoTサービスの提供を可能とし、連携パートナーは今後も拡大していく予定だ。

KDDIは2019年度の商用化に向けて、日本企業の海外現地法人の約9割を網羅する世界50カ国以上における各国キャリアと同基盤の連携を目指す。

日立との連携で世界展開する日本企業を支援

一方、日立との連携についてはLumadaとの連携に取り組み、日立製作所 執行役常務社会ビジネスユニットCEOの永野勝也氏「Lumadaはオープンでアダプターであるため、ユーザーの事業環境に応じた課題解決を可能とし、これまでにユーザーとの協創は500件を超える」と話す。

  • 日立製作所 執行役常務社会ビジネスユニットCEOの永野勝也氏

    日立製作所 執行役常務社会ビジネスユニットCEOの永野勝也氏

両社では「サービスプラットフォームの連携」「グローバル通信の管理」「幅広いIoT機器への適用支援」の3つの協業に取り組む。

  • 協業の概要

    協業の概要

また、同氏はIoT世界基盤における同社の役割として「IoT世界基盤の特徴である世界への拡がりについては、グローバル通信プラットフォームにつながる国や地域の拡大を速やかに実現する。市場の拡がりに関しては多様な業種の大量のデータを効率的に処理する技術・ノウハウにより、グローバルでのIoT化を支援し、価値の拡がりにはLumadaのソリューションの提供とパートナーとの連携による新たな価値創出を図る」と、意気込む。

  • IoT世界基盤における日立の取り組みの概要

    IoT世界基盤における日立の取り組みの概要

第1弾として、7月から日立産機システムがグローバルに展開する産業用インクジェットプリンターにおいて、グローバル通信プラットフォームを試験導入する。

産業用インクジェットプリンターは、食品などの製造ロット番号や消費期限などの印字を行う機器であり、日立産機製品の多くが海外で使用されており、印字品質の管理や製品の安定稼働の支援のために遠隔モニタリングの導入を図っているが、グローバルで安定的に導入するには、通信環境面で課題があると指摘。

グローバル通信プラットフォームを活用することにより、セキュアな通信環境においてデータの大容量化にも対応可能となり、遠隔モニタリングのグローバル展開が見込めるという。将来的には、不具合の予兆管理などメンテナンスサービスの拡大やコストの低減を目指す。

  • 試験導入の概要
  • 試験導入の概要
  • 試験導入の概要

  • 遠隔モニタリングのイメージ

    遠隔モニタリングのイメージ

両社では、今後も建設機械や工場の生産設備、エネルギーや交通など社会インフラ分野の設備管理など幅広い分野において本基盤の活用を検証するなど、グローバルにおけるIoTの事業展開を進めていく方針だ。

  • 左から森氏、永野氏

    左から森氏、永野氏