日立製作所は5月28日、ピッキング用ロボットと自律走行する搬送台車を統合制御することで、搬送台車に積まれた商品群の中から指定の商品をスムーズに取り出し、ピッキング作業を効率化する複数AI協調制御技術を開発したと発表した。
新技術は、カメラ画像から取り出す商品と最適なピッキング方法を判断するAIにより、ピッキング用ロボットを制御するAIと、搬送台車を制御するAIをリアルタイムに統合管理し、協調制御する。
これにより、商品の荷積み状態に基づいて、搬送台車とロボットアームは適した速度で互いに衝突することなく近づき、搬送台車の移動を止めずにスムーズに商品をピッキングすることを可能としている。
新技術の特徴として「カメラ画像から最適なピッキング方法を判断するAI」「リアルタイムな複数AI協調制御技術」の2点を挙げている。
最適なピッキング方法を判断するAIに関しては、カメラの画像から商品の荷積み状態に応じてピッキング用ロボットが取り出し可能な商品の位置や、搬送台車の速度調整量を判断するAIを開発。事前にピッキング対象の商品の3Dデータを入力することで、さまざまな移動速度で運ばれる商品の荷積み状態をランダムに発生させ、ロボットアームによる数万通りのピッキング動作をシミュレーションする。
シミュレーションの結果に基づき、画像解析処理の教師データを自動生成し、ディープラーニングを活用した学習を行うことで、荷積み状態に応じて変化する作業対象の商品位置や搬送台車の速度調整量など、ピッキング用ロボットと搬送台車を制御するために必要な情報を画像から解析し、判断する。実際にピッキング作業を行いながら学習する必要がないため、効率的に導入・運用することができるという。
複数のAI協調制御技術については、運搬される商品のケースの中をピッキング用ロボットの手前に設置したカメラで撮影し、画像から最適なピッキング方法を判断するAIのもと、リアルタイムにロボットのAIと搬送台車のAIを協調制御する技術を開発した。
同技術は、ピッキング用ロボットを制御するAIに対しては取り出す商品の位置情報に基づき算出したアーム動作を指示し、搬送台車を制御するAIに対しては現在の移動速度をもとに減速や加速を指示する。
また、ピッキング用ロボットのAIは搬送台車の速度や位置をリアルタイムに確認し、ケースや他の商品に衝突しないようにアーム動作の微修正を行うことで、搬送台車を停止させることなく、効率的な自動ピッキングを実現するとしている。
これらの技術を活用した社内実験の結果、0.5m/秒で走行する搬送台車を停止させることなく、商品のピッキングに成功したことに加え、搬送台車を停止させてからロボットが商品を取り出す従来の方法では13秒だった作業時間が同技術を活用した場合は8秒と、38%の高速化を確認したという。
今後、同社は新技術を搭載した倉庫作業ロボットシステムの製品化を目指すとともに、作業の自動化や高速化技術の開発を通じ、物流の効率化を図る考えだ。なお、新技術のうち、搬送台車の動きに合わせてロボットアームの動作を計画し、微修正する機能は英エディンバラ大学と共同で開発した。