熊本市と日本マイクロソフトは4月3日、熊本市の市職員および教職員(計12,500名)を対象に、「クラウドソリューションを活用した働き方改革基盤構築プロジェクト」を開始すると発表した。熊本市は、今回のプロジェクトやWi-Fi整備なども含め、今後5年間で47億円のIT投資を行うという。

  • 記者会見で握手を交わす熊本市 市長 大西一史氏(右)と、日本マイクロソフト 代表取締役 社長 平野拓也氏(左)

市職員の働き方改革では、Microsoft 365を全庁で採用することで、時間や場所にとらわれない市民サービスの提供や、市民協働を推進するための環境を整備。配備済のタブレットデバイス(約600台)においてMicrosoft 365を先行利用し、市民からの問い合わせ対応などに Skype for Businessを活用し、本庁とオンラインで接続してサポートするなどの、市民向けサービスにおける活用シナリオを検証する。

また、AIを活用したマイクロソフトの生産性分析ツール「Microsoft MyAnalytics」を全庁職員が使用し、働き方を可視化したり、AIによる助言を元に、改善のための「気づき」を得て、業務改善を行うほか、その過程で作成された、各職員の働き方に関する客観性の高い基礎データを、働き方改革の進捗確認に活用するという。

そのほか、クラウドサービスを利用し、平常時の情報インフラを、そのまま非常時の連携手段の情報基盤として転用できるよう整備するほか、災害時に庁内情報基盤を活用することで、必要な人材、物資、資金等のリソースの割り当てを最適化できるようにする。

一方、教職員の働き方改革では、全136校の市立小中高等学校の教職員に対して、Windows 10搭載デバイスを整備し、校務・教務クラウドシステムを活用して、文書のデジタル化・情報共有による印刷文書とそのコストの削減、授業コンテンツの共有、テレワークの運用などにより、校務の効率化と時間外労働の縮減を図ることで、教職員の働き方改革を推進する。

  • 熊本市が取り組む働き方改革の内容

今回のプロジェクトでは、日本マイクロソフトがこれまでの経験から得たノウハウや知見、および社内実証データを熊本市に提供する。

具体的には、これまでどういった施策を実施し、それによってどう変わったといった実証データがマイクロソフトのサービス部門や人事などの各部署に貯まっており、こういったデータやノウハウを提供する。また、それがユーザープロファイルによって、どう変えればいいかをアドバイスする。

そのほか、マイクロソフトでは、社員が毎週、MyAnaryticsの分析結果をもとに、自分の働き方を見直す作業を行っており、そのしくみやノウハも熊本市に提供するという。

今回のプロジェクトは、2016年の熊本地震の際、日本マイクロソフトが東日本大震災の経験をもとに、NPOとともに支援したことがきっかけ。

日本マイクロソフト 代表取締役 社長 平野拓也氏は、「マイクロソフトは、東日本大震災においても、クラウドサービスを用いて被災地の支援をさせていただいた。こういった経験から、熊本地震の際も支援させていただいた。昨年、熊本市を訪れた際は、さらに市職員と教職員の働き方改革支援で協力できるのではないかと考えた。今回のプロジェクトは、パブリッククラウドとAIを活用する働き方改革では最大規模の事例だ。この取組を他の自治体に紹介することで、デジタルトランスフォーメーションに貢献できると考えている」と述べた

熊本市長 大西一史氏は、「熊本地震の際には、避難所、物資拠点、市役所の連携がうまくいかず苦労したが、マイクロソフトさんからクラウドとデバイスを無償で提供していただき、Rねっと(Restoration and Reconstruction)という避難所支援システムを活用した。これによって、クラウドの利便性を認識した。また、新しい熊本市の構築に取り組むために、働き方改革をICTを結び付けて行っていく必要性も感じた。今後は、人と物などの資源と情報を結びつけていくことが、復興のスピードアップの鍵になる。日本マイクロソフトさんは、長年働き方改革に取り組んでいるので、改革のマインドも取り入れていきたい。AIを使ったアドバイスを得ることもでき、行動分析したエビデンスを利用することで、相当効果があると期待している」と語った。