日本電気(NEC)と日本気象協会(JWA)は2月28日、食品ロス・廃棄の解決に向けて、バリューチェーン全体で需給を最適化するビジネスで協業し、「需給最適化プラットフォーム」を2018年7月から提供開始することを発表した。同プラットフォームはNECのAI技術群である「NEC the WISE IoT Platform」上に構築される。
今回は第1弾として、同プラットフォームを食のバリューチェーン上に適用。需要予測結果や在庫情報、販売実績をユーザ企業と共有することで、個々の企業だけでなくバリューチェーン全体の需給を最適化し、社会課題である"食品ロス・廃棄"の解決を目指す。
NEC エンタープライズBU 理事の中田平将氏は「現在、世界中で年間約13億トン、日本だけでも632万トンの食品が廃棄されている。過剰な生産や発注はムダな食品を生むだけでなく、製造や物流において余計なエネルギー消費やコストを発生させる。食品廃棄が発生する大きな原因は、需要と供給のミスマッチ。刻一刻と変化する消費環境を十分にとらえきれていないことが、このような結果をもたらしている。そこで、我々のAI技術を活用することで、需要と供給の最適化を図り、食品廃棄を削減していきたい」と、同プラットフォームを展開するに至った背景を説明した。
需給最適化プラットフォームでは、さまざまなデータ事業者から提供される情報(気象情報、イベント開催情報など)や、バリューチェーンを構成する企業のデータを相互活用し、これまで企業ごとに行っていた需要予測精度の向上を実現する。これにより、「製造」企業の在庫・生産の適正化や、「卸・物流」企業の在庫の最適化、リソースの効率化、「販売」企業の発注の適正化など、食のバリューチェーン全体の最適化を図ることができるという。
同プラットフォームで使われるAIエンジンは、予測結果の理由を説明できるNEC独自の「異種混合学習技術」。「AIが導き出した結果だから」という理由で発注数を定めるのではなく、「雨によって来客数が減ると予測されるため」といった明確に示された根拠から業務遂行や意思決定を行うことができる。
加えて、予測分析に必要な気象情報や人口統計といったコーザルデータと呼ばれる外部要因を、あらかじめプラットフォーム内に保持しておくことで、さまざまなパターンの分析が可能だ。さらに、金融機関でも採用されているような高度な匿名化加工技術、秘匿化技術を活用し、セキュアなデータ連携が可能な環境を準備している。
「需給最適化プラットフォーム」のメニューとしては、小売、製造、卸向けの予測メニューに加えて、導入支援のコーディネーターサービスも提供する予定だ。リリース時から提供するメニューは、短期出荷商品サービス、来店客数予測サービス(日別)、カテゴリ別販売サービス、単品別販売サービス、推奨発注量提案サービスで、ほかのメニューは順次拡大させていくとしている。
同プラットフォームにおいてJWAは、データ解析の基礎となる気象データの提供や、それらを活用した商品需要予測サービスの提供を共に推進していく。
JWA 防災ソリューション事業部 商品需要予測事業 マネージャーの本間基寛氏は「気象のリスクはあらゆる産業に影響をもたらす。しかし、近年は異常気象が発生しているため、経験や勘に頼ったオペレーションではなく、データドリブンなオペレーションへ変革していく必要があると考えている。気象情報を使った需要予測情報をサプライチェーンで共有することによって、さらなる付加価値を生み出すことができるだろう」と、NECとの連携に期待を寄せた。
中田氏は「今回の連携によって、JWAの保有する気象データや蓄積した需要予測のノウハウに、我々のAIエンジンを活用した需給最適化プラットフォームを組み合わせることで、予測の精度向上を目指していきたい。2020年までに関連事業含めて200憶円の売上、数百社の参加が目標だ」と同ビジネスの展望を述べた。