海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、南海トラフ巨大地震の発生帯の観測を強化するために和歌山県新宮市の南東約100キロの海底下に新たな「長期孔内観測システム(LTBMS)」を2月下旬までに設置する。設置作業は既に地球深部探査船「ちきゅう」を活用して行われている。南海トラフ巨大地震発生帯のLTBMSとしては3つ目で、JAMSTECは、巨大地震の発生につながるプレートのひずみエネルギー蓄積が進む場所の観測を強化できる、としている。
南海トラフ巨大地震の発生につながるデータを得るための観測網として現在「地震・津波観測監視システム(DONET)」がある。JAMSTEC は南海トラフ周辺に22の観測点で構成されるDONET 1と、29の観測点で構成されるDONET2の2つの観測網を設置し、運用は2016年4月に防災科学技術研究所に移管されている。既に設置されているLTBMSは「C0002」と「C0010」の2地点にあり、地殻内流体の圧力や温度の変化などに関するデータを収集し、観測データはDONET1に接続されている。
今回の作業は1月12日から2月24日までの日程で行われている。3つ目のLTBMSは、和歌山県新宮市の南東約100キロの海底(水深約3,870メートル)にある「C0006」地点から495メートル掘削して設置される。この地点はフィリピン海プレートが陸側のプレートに沈み込むプレート境界断層の前縁に位置し、3つのLTBMSが揃うことにより、プレートのひずみエネルギー蓄積が進む場所を広くカバーできるという。JAMSTECの作業、研究チームは、今回の設置作業が完了すれば、巨大地震につながる海底下の現象がどの程度進んでいるかなどを知る手掛かりが得られる、と期待している。
今回のLTBMS設置は、「国際深海科学掘削計画(IODP)」の一環である「南海トラフ地震発生帯掘削計画」に基づく作業。同計画は、巨大地震や津波の発生源とされるプレート境界断層などを掘削。地質試料を採取し、LTBMSで地殻変動などを観測することにより、南海トラフでの地震・津波発生メカニズムを解明することを目的としている。
IODPは2013年10月から行われている国際協力プロジェクトで、現在、日本、米国、欧州(17カ国)、中国など 26カ国が参加している。「ちきゅう」と米国のジョイデス・レゾリューション号が主力で、これに欧州の船を加えた複数の掘削船を用いて地球内部構造などの解明を目指している。
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