働き方改革が叫ばれる昨今。企業はそれぞれが独自の働き方を模索し、生産性を高めるために試行錯誤を繰り返している。Webサイト構築や関連製品・サービス提供を展開しているシックス・アパートは、「SAWS(Six Apart Working Style)」を掲げ、各社員が自分たちにとって働きやすい方法を考えながら仕事を進めているという。

では実際、同社の社員はどのような働き方をしているのだろうか。シックス・アパート 事業開発 シニアコンサルタントの作村裕史氏に、SAWSの取り組みについて話を伺った。

社員35人に対してオフィスの定員は10人

東京・神保町。古書で知られるこの街のビルの一室に、シックス・アパートのオフィスがある。フロアは執務スペースと会議スペースに分けられており、入り口付近には食事などができる休憩スペースも存在する。取材当日、決して広いとは言えないオフィスでは、5人の社員がパソコンに向かって作業をしていた。

「現在、社員数は35名ですが、オフィスには10席程度のフリーアドレスのデスクしかありません」と、作村氏。どう計算しても全員がオフィスに入ることはできないが、社員はどこで働いているのだろうか。

  • シックス・アパート 事業開発 シニアコンサルタントの作村裕史氏

    シックス・アパート 事業開発 シニアコンサルタントの作村裕史氏

「自宅やカフェ、コワーキングスペースなど、仕事状況に応じて各自の判断で働いてもらっています。会社のほうが集中できる場合は出社して仕事をする人もいますが、実際、頻繁に出社するメンバーはだいたい2~3人ですね。リモートワークをしてくださいというルールを作るのではなく、出社しなければならないというルールをなくすことで自律的な働き方を実現できたと思います。ただし、チームごとに開催される定期的なミーティングがあるので、全員少なくとも月に1回は出社します」

  • シックス・アパートの執務スペース

    シックス・アパートの執務スペース

どの職種の社員も、必要なときに集まりさえすれば、働き方は自由。多くの社員が裁量労働制を適用しており、勤務時間もライフスタイルに合わせて調整することが可能だ。

「もちろん、超過労働にならないよう、ログデータと報告によって勤務時間は把握しています。時間の調整を自由にできるようになった反面、業務で成果を残さなければならないため、ある意味でプレッシャーが高まったかもしれません。仕事をどう進めれば成果を最大化できるかというところも、自分で考えてほしいと思っています」

非同期コミュニケーションがリモートワークを加速させる

"自分で考える"ことがシックス・アパート流。働く場所や時間などについて社員は日々、自分にとって一番いいスタイルを模索している。だが、各々が好きなように働いて、意思疎通などに問題は生じなかったのだろうか。

「チャットツールの『Slack』を使った"非同期コミュニケーション"が、スムーズな社員間の連携を後押ししてくれたと思っています。たとえば、SNSなどで誰かとつながっている場合、誰かが起こしたアクションに対して、翌日以降に反応してもコミュニケーションを続けることができますよね。私にとってチャットは、それと同じで非同期のツールとして気軽に話しかけられるものです。1つのテーマで話し合うにしても、各人アイデアが浮かんだタイミングでリアクションをしていけば、数日かけてコミュニケーションを続けることができます。朝型の人もいれば夜型の人もいるでしょう。それぞれが自分のタイミングで対応すればいいのです。能力の発揮されやすい時間帯が異なるなかで、全員が同じ時間、同じ場所に集まって仕事することには無理があるのかもしれません」

チャットを使えばそれぞれが自分のタイミングで発言することができる。働く時間や場所が異なっていても、意思形成を行うことは可能だ。非同期コミュニケーションでもしっかりとチームワークを発揮できれば、社員のポテンシャルを最大限活かしつつ、チームとしても効率的に働くことができるだろう。

「もちろん、製品の立ち上げ時期や緊急時など、社員が顔を突き合わせて仕事することもあります。ただ、家族ではないので、毎日一緒にいる必要はないかと。必要なときには集まりますが、普段別々に働くことで、業務成果に集中し、人間関係の摩擦を最小限にコントロールすることもできるでしょう」

システム開発の仕事は物理的に社員が同じ場所に集まらないでも行うことができる。チャットの非同期コミュニケーションツールをはじめ、タスク管理ソフトやプロジェクト管理サービスなどのツールを活用することで、メイン業務のリモート化は進んだ。