ネットアップは11月30日、都内で記者向けのラウンドテーブルを開催し、来日した米ネットアップ エグゼクティブヴァイスプレジデントのジョエル・ライヒ氏と、同シニアヴァイスプレジデントのアンソニー・ライ氏が同社の戦略について説明を行った。

冒頭、ライヒ氏は「データを活用することで世界は急速に変化している。従来、ITはハードウェア、ソフトウェアと比重の変遷があったが現在ではデータへのアクセスが重要となり、データ自体がビジネスだという時代を迎えている」との認識を示す。

  • 米ネットアップ エグゼクティブヴァイスプレジデントのジョエル・ライヒ氏

    米ネットアップ エグゼクティブヴァイスプレジデントのジョエル・ライヒ氏

しかし、データは分散・動的・多様であるため変化しやすく、サイロ化してしまうことが問題点として挙げれるため、デジタルトランスフォーメーションが困難になることから、同社のデータ管理ビジョンである「データファブリック」が解決するという。

同ビジョンは、データ管理をクラウドとオンプレミス全体で簡素化・統合し、データのポテンシャルを最大限に引き出す一貫した統合的データサービスとして、データの可視化・分析、データのアクセス・管理、データの保護・セキュリティを実現するとしている。

顧客がデータ移行の際に直面する課題とは

顧客がデータを移行する際の直面課題として「ハイブリッドクラウドの活用、次世代データセンター(DC)の構築、データ管理とストレージの最新化の3つの必須課題に直面する」と、同氏は指摘した。

ハイブリッドクラウドの活用に関しては、同社では従来から統合されたサービスを提供しており、ハイブリッド・マルチクラウドの環境で活用でき、米国で10月に発表されたMicrosoft Azureベースの企業向けNFS(ネットワークファイルシステム)サービス「Azure Enterprise NFS」も含まれる。また現在、米国で開催(11月27日~12月1日)されているAWS re:Inventでは、NFS Hybrid Service for Amazon Web ServicesとVMware Cloud on AWSに対応することを発表している。

  • ネットアップクラウドデータサービスの概要

    ネットアップクラウドデータサービスの概要

  • Azure Enterprise NFS」の概要

    「Azure Enterprise NFS」の概要

  • AWSとの連携の概要

    AWSとの連携の概要

ライ氏は「われわれは、AWSとAzure、Google Platform、IBM Cloud、Alibaba Cloudの5つのハイパースケーラーのクラウドベンダーと提携しており、ハイブリッドクラウドだけでなくマルチクラウド環境でもデータ管理が可能な一貫性を持ったクラウドサービスを提供している」と、述べた。

  • 米ネットアップ シニアヴァイスプレジデントのアンソニー・ライ氏

    米ネットアップ シニアヴァイスプレジデントのアンソニー・ライ氏

また、Azure Enterprise NFSについて同氏は「われわれがONTAPの技術を提供しており、Azureのコンソールに直接連携され、Microsoftがサービスとして販売、サポート、プロビジョニング、課金する。さらに、ONTAPだけでなく、オーケストレーションしたONTAPのさまざまなサービスが管理・最適化されている。単にハイブリッド環境だけでなく、パブリッククラウドに拡大し、従来のITやストレージ管理者の業務まで対応でき、2018年前半にプレビュー版の公開を予定している」と、説明する。

現在、取り組んでいるものはハイブリッドやマルチクラウドの環境においてエンタープライズレベルのストレージやデータサービスだけではなく、コンピュートも組み合わせている。2018年に新機能として「NetApp Cloud Orchestrater」の提供を予定しており、これは管理(アプリケーション+データ)、導入、開発、実行、計測など、複数クラウドのオーケストレーションを可能にする。

次世代DCの構築、データ管理とストレージの最新化

次世代DCの構築では「新しいデータ・アプリケーションが登場しているほか、ソーシャルやクラウド、モバイルタイプなど多様なデータがIoTやセンサデータから生まれている。そのため、次世代DCはITのアジリティが重要であり、完全な自動化やオープンAPIなどへの期待が高まっていることに加え、同じレベルでの拡張性やリソースへのアクセスが求められている」と、ライヒ氏は現状を読み解く。

そこで、次世代DCのテクノロジーが有効となり、同社はオブジェクトストレージの「StorageGRID」、自動化されたオールフラッシュアレイの「SolidFire AFA」、コンバージドインフラストラクチャの「FlexPod SF」、ハイパーコンバージドストラクチャの「NetApp HCI」を有している。

  • 次世代データセンター向け製品の概要

    次世代データセンター向け製品の概要

データ管理とストレージの最新化について同氏は「次世代DCやクラウドソリューションが登場しても従来のオンプレミスのインフラは消滅するということではないが、経営陣から既存DCのオペレーション最適化の要求などもあるため、フラッシュ製品で対応する」と、意気込む。

フラッッシュ製品は「EFシリーズ」、「All Flash FAS」、SolidFire AFA、FlexPod、FlexPod SF、NetApp HCIを揃えている。同社のフラッシュ戦略は低レイテンシと高速転送、ワールドクラスのデータ管理を組み合わせ、そこにデータファブリックを掛け合わせることエンタープライズクラスのソリューションを実現しているという。

  • フラッシュ製品の概要

    フラッシュ製品の概要

IoTとAIの取り組み

同社はプロダクトとオペレーションを行うエンジニアリングラボにおけるデータファブリックの事例として「Active IQ」のほか、AIを活用したサポート「Elio」について紹介した。Active IQは、30万件のシステムから日々収集される360億万件のデータや機械学習、AIを用いて大規模なIoTのインフラとして構築した。データファブリックのイノベーションを活用し、パブリッククラウドのスケールを使い、機械学習やAIをNFSaaSで提供している。

  • 「Active IQ」の概要

    「Active IQ」の概要

Elioに関してはWatosonを活用しており、バーチャルサポートエージョントとなる。Watsonを用いてサポートエキスパートにより、トレーニングを受け、従来の手法よりも4倍速く問題を解決。顧客における製品の使用状況やワークロード、パフォーマンスなどを確認したほか、テレメトリにパターンを学習させており、追加のインサイトをリアルタイムのデータベースとして提供しているという。

  • 「Elio」の概要

    「Elio」の概要