10月中旬にイヤーセンサ式脈拍計「MiKuHa」を発表したミズノ。同社と言えば、スポーツに携わっていた人であれば馴染み深く、ウェアやシューズなど、主にスポーツ用品を手がけているというイメージが大半だが、MiKuHaを2018年春に販売を開始する。今回、同製品の開発を担当したミズノ 研究開発部 センシングソリューション研究開発課 研究員の渡辺良信氏に話を伺ったので、その模様をレポートする。
MiKuHaは2015年前後に開発を始め、重さは38g(イヤーセンサ部分、本体)、BLE(Bluetooth Low Energy)のペアリングとビーコンを使用した通信に対応。IPX55の防水性(あらゆる方向からの噴流水でも影響がない)を有し、水中ウォーキングなどができ、単独メモリを搭載しているためBLE送信できない場合でも単独計測は10時間以上を可能としている。バッテリーは35時間程度で、センサは故障した際などに交換でき、充電はUSB充電で行う。価格は3万円台(税別)を想定している。
渡辺氏は特徴として「不快感なく、簡便に装着できることであり、片耳の耳たぶに装着し、激しい運動でもチェスト型と同等の精度で計測を可能としている」と説明する。
従来からセンサを活用したスポーツ向けの製品はチェスト型、腕時計型、最近ではウェア型と数多く存在する。しかし、同氏はそれらの製品について次のように指摘する。
「チェスト型であれば胸への締め付けによる不快感や、1つのデバイスを大人数で使用する衛生上の懸念、腕時計型は簡便に取り付けられる一方で個人差や装着法により精度に問題が生じる可能性があり、ウェア型は違和感なく体にフィットするものの、激しい運動には向いていないなどの課題がある」。MiKuHaは、これらの課題を踏まえた上で開発しているということだ。
独自のアルゴリズムにより運動時の振動によるノイズを除去しているほか、脈の検出に影響を及ぼす太陽光が入りにくいようにセンサ部を耳たぶ接触面のみに設けることで、腕時計タイプと比べ、屋内外問わず高精度なデータ計測を可能としている。
渡辺氏は「アルゴリズムは、従来のセンサのアルゴリズムから運動に適したものに改良し、通常は毛細血管で脈を計測することは難しいが実現しており、他社との差別化ポイントでもある。一方、腕時計は2個のセンサを使っている場合もあるが、MiKuHaは1つのセンサで行った。リズミカルな動きをする際に独特の周波数を発するため、周波数解析に苦労した」と話す。
仕様上1台につき、最大6名まで接続できるが、7人以上を計測する場合はラピスセミコンダクタのモジュールと中継器(別オプション)によって実現できるよう開発を進めている。これにより、無制限にデータ取得ができることに加え、環境情報などを一元的にクラウド上でデータを把握することを可能としている。
加えて、グループ会社であるセノー製のトレッドミルと連携。これまではトレッドミル単体でデータ取得は可能だったが、連携させることで日々の運動をトータルで管理することができるようになるという。