11月8日から10日にかけて、幕張メッセで国内最大級規模のIT専門展「Japan IT Week 秋 2017」が開催された。注目を集めるIoTや人工知能、その他企業のビジネスを加速させる様々なソリューションが一堂に会すなか、今回も面白いアプローチで業務効率化や生産性の向上、ユニークなサービスに数多くの来場者の眼は釘付けとなっていた。
まず本稿でピックアップするのは、全世界で一世風靡した腕時計「G-SHOCK」や中高生の数多くに信頼を寄せられている電子辞書「EX-word」等を世に送り出しているカシオ計算機ブースで展示されていた「なるほど、納得!」な情報通信ソリューション『ピカリコ』だ。
このピカリコ。カメラを受信機として、そしてLED発光装置を送信機として用いることで、色の変化パターンで情報を伝達させる可視光無線通信なのだ。赤・緑・青の3色を用い、色の順列パターンを信号としており、24回の発光色切り替えでひとつの情報(IDコード)を表すことができ、IDコードの数は1,062,882と多彩な情報を送信することができる。受信機役のカメラ自体は「一般的なWebカメラでも十分に対応可能」とは解説員の方のコメント。システムの構成要素として、使用するカメラの性能・台数に応じたパソコンを用意する必要があるそうだ。例えば、HD解像度カメラ1台の接続であればCeleron 1.7GHz以上のマシン、4台のカメラを接続する場合はCore i7 4GHz以上といった具合だ。
さて、気になる使用用途の事例だが、ブースではカメラとLEDを使った位置測位システム、工場設備・工作機器の稼動情報収集システムのデモンストレーションが行われていた。位置測位システムでは、カメラ4台を接続し、広い工場・倉庫を想定した敷地内のどこにモノが存在するのかを追跡できるようになっていた。しかし、実際の工場・倉庫ではデモのようにフラットな環境というものは少ない。そういった場合どう対処するのかを尋ねたところ「死角をなくすようカメラを複数設置することで位置測位を可能とします」とのこと。また、カメラの性能を向上させれば広大な敷地であっても対応することができるという。
物の位置把握への応用例としてピカリコを用いたデモ。写真右には四隅にWebカメラが計4台設置されており、光を発しているLEDが位置を把握したい物を表している。それぞれの物がどこからどこへ移動したかを容易に把握することが可能だ。現時点では若干のタイムラグが存在するが、頻繁に移動するものを追跡する必要がなければ十二分に威力を発揮してくれるだろう |
一方の稼働情報収集システムは、工場内に設置された工作機械のステータス(通常稼働、油圧低下、緊急停止等)を光の信号に変え伝送してくれるというもの。工作機械の多くは、もともと運転中か否かや異常発生を伝えるライトやブザー等が組み込まれており、このピカリコを導入するに当たって大きな改造・改修を必要としない。また、工作機械が稼働する工場などでは、既に電波で通信・制御するものがあるなど、光を用いることで電波干渉等を気にする必要が無いのもユニークなメリットと言えるだろう。
一見単純に思える手法での位置測位や稼働情報収集に思えるが、安価にこれらの要件を満たすことができるうえに、工場・倉庫内に余計な配線を通す必要もないため、既存の環境を大きく変えることなく導入することができる。しかも、場合によっては電波が使用できないといった環境下においても利活用できるというのは大きな魅力だ。カシオ計算機では、ピカリコを実際に現場に導入可能か否かを評価するキットも無償で用意している。製品版とは受信可能なID数が10、推奨Webカメラにのみ対応と若干の制限はあるものの気軽に試すことができるので、興味のある方はピカリコ公式Webサイトよりコンタクトを取ってみてはいかがだろうか。