仮想通貨を使った資金調達用ソリューションであるICOの発展を目指すICO協議会は11月7日、第1回メディア向けの報告会を開催した。
ICOとは、Initial Coin Offeringの略で、実施企業は権利付与やサービス提供などが約束されるデジタルトークンを発行し、出資者が仮想通貨でそのトークンを購入するという資金調達ソリューション。報告会では、まずテックビューロの提供するICOソリューション「COMSA」が2017年10月2日~11月6日に実施したトークンセール(売り出し)の結果についての報告が行われた。
成功のカギはオンラインコミュニティによる24時間の多言語対応
今回実施された、COMSAのICOでは、大口のプレセールとして約3800万ドル、合計売上約9540万ドル(約109億円)を達成。登録者数は23万人で、2/3が1000ドル未満の小口、10%が5万ドル以上の購入だったという。
同協議会メンバーであるテックビューロ 代表取締役所長の朝山貴生氏は「一般的に取り上げられるリストで比較すると、COMSAのICOは歴代7位の金額の売上を実現することができました。また、購入希望者によるアクセス数は、通常のWebサイトではありえない秒間1万アクセスを記録。これは仮想通貨取引所が受けたDDoS攻撃にすら匹敵する数字です」と、今回のICOを振り返る。
そして、ICO成功のカギを握ったのが、ユーザーなどから構成されるコミュニティだ。
「メッセージングサービスTelegramを通じ、日本語では約4700人、英語が約3600人、そしてロシア語約2600人に参加してもらい、合計1万人を超えるコミュニティを形成しました。今回テックビューロでは10人体制でサポートなどの対応を実施しましたが、社員以外のオンラインのコミュニティが成功のポイントになったと考えています。コミュニティメンバーによる、24時間体制の多言語対応を行うことができました」(朝山氏)
また、オンラインコミュニティは詐欺の防止にも有効だったという。
ガイドラインが整えば、日本は先進的なICO国家になる可能性も
2016年に100億円程度だったICOマーケットは、2017年は11月時点で3700億円という規模になっている。
各国のレギュレーションを見ると、有価証券の性質をもっている場合は既存の法律が適用され、有価証券と同等に扱われることが一般的だが、スイスでは明確なガイドラインが発行され、中国と韓国は全面的に禁止されているなど、国によって取り組みはさまざま。
日本では現状、明確な規定がないため、ICO実施企業がそれぞれルールを制定している状態だ。ただし、仮想通貨交換業に対するレギュレーションが施行されているので、悪徳なコイン商法などの運営は難しくなっているという。
朝山氏は「ここにICO発行体に対するガイドラインが敷かれれば、世界でも先進的なICO国家になる可能性があると考えています。我々が主導する形でガイドラインを準備できるようにして、マーケットの健全化に貢献していきたいですね」と、ICOマーケットの健全な成長に対するビジョンを述べた。
健全で収益性の見込まれる企業だけがICOを実施できるようになる
今回実施されたCOMSAのICOは、これからICOを検討する企業にとって道筋を示すものとなった。しかし、すべてのICOが成功するわけではない。
「数多くのICO案件が立ち上がっていることもあり、想定金額に届かない、事故が発生するなどで失敗することも少なくありません。ユーザーが増えれば増えるほど需要が増加してく『ネットワーク効果』と、投資などから得られた資金はさらに投資に向かいやすい心理的効果である『ハウスマネー効果』、そして魅力的なPR、収益性の見込める事業ビジョンから『人気』を得ることで、トークンのバリュー向上が必要です」と、朝山氏。
ICOで販売されるトークンは大きく2つあり、有価証券の性質をもったセキュリティトークンと、投票機能などを有し、有価証券の性質をもたないユーティリティトークン分けられる。今後、COMSAではユーティリティトークンに限定して、ICOソリューションを引き受けるとしている。
今では1週間で60社以上がトークンの売り出しを開始するなど、にわかに盛り上がりをみせているICOだが、「既存の資金調達と同じで、バリュー向上が実現でき、かつ健全で収益性の見込まれる企業だけがICOを実施できるように淘汰されていくでしょう」と、朝山氏は予測する。