2017年8月9日~8月21日の間に伊勢丹新宿本店で開催された「デジタルホビーフェス」。スマートフォンと連動するおもちゃなど、最新テクノロジーを活用したアイテムが一堂に会し、実際に触って体験できるというイベントだ。
デジタルホビーフェスの開催期間中、顧客分析カメラを内蔵したフクロウ型の小型ロボット「ZUKKU」をイベントの案内役として設置し、性別や年齢といった顧客情報を収集・分析する実証実験が行われた。今回、伊勢丹新宿本店に伺い、実験で稼働しているZUKKUに触れながら、実験を行った伊勢丹とZUKKUを制作したハタプロの両社に話を聞いた。
なお、今回案内役としてその役目を果たしたフクロウ型ロボットZUKKUは、同イベントの検証用であり、販売などはされていない(2017年8月末原稿執筆時点)。
内蔵カメラで顧客属性を認識し、イベント商品を紹介するAIロボット
三越伊勢丹 婦人・子供・婦人雑貨統括部 新宿婦人・子供商品部 玩具催事 バイヤーの西山裕慈氏は、今回のデジタルホビーフェスについて「近年、テクノロジーとおもちゃは近づいてきていると感じています。プログラミングやロボットに対する関心も高まってきていますね。そこで、普段なじみの薄いアイテムにも触れられる機会を作ろうと思い、今回のデジタルホビーフェスを開催しようと考えました」と、きっかけを語る。
また、「狙いという点では、今後AIがますます普及していくと思いますが、今の子供たちがどのようにそのテクノロジーと付き合っていくのか、実際に触れる機会を作ることで、少しでもAIを身近に感じてもらえればいいなと思います」と、付け加えた。
イベントスペースを訪れるとまず目に飛び込んでくるのが、入り口に設置された小さなフクロウ型ロボットのZUKKUだ。なんだろうと思って眺めると「ホウ、ホウ」という鳴き声が聞こえ、突然フクロウの横にある液晶端末が反応する。「あなたへのおすすめ」としておもちゃの紹介動画が流れ始めると、気になってついつい見入ってしまう。
ハタプロ 代表取締役の伊澤諒太氏は「ZUKKUはAIの画像認識によってカメラに映った人物の性別や年齢といった属性情報を収集・分析し、その人に合った商品情報をクラウド接続している端末に表示させます。今回の実証実験では、イベントで販売されているおもちゃの中から、おすすめのアイテムを動画とともに紹介するようにしました」と、ZUKKUの性能と今回の実証実験の内容を話す。
ZUKKUにはSIMカードが搭載されており、入手した情報をクラウド上に送信。そして、クラウドから伝達された内容を、ディスプレイに表示するという仕組みになっている。表示はHTML形式であるため、ブラウザに接続できるものであればディスプレイの大きさや場所などは問わず、画面を分割して表示させたり、遠隔地のディスプレイに表示させたりと、フレキシブルな使い方ができる。
また、フクロウの愛らしい見た目について「多くのお子様がいらっしゃるフロアということで、かわいらしいデザインであることも実証実験で導入する決め手となりました。無機質なデザインではなく親しみが持てるデザインだからこそ、お客様の心をつかむことができるのだと考えています」と、西山氏。
それに対して伊澤氏は「我々としてもその点は意識しているところです。これが単なるネットワークカメラのような外観であれば、売り場は楽しくなりませんし、来店者の体験価値も向上しないでしょう。ただし予想以上だったのは、子供だけでなくファミリー全体で受け入れられている点ですね」と、手ごたえを感じている様子だ。
イベントではそのデザインに魅せられた来場者が足を止め、ZUKKUを手に取ってみる人が多いという。実際に現場に立ち、イベントの盛り上がりを肌で感じている三越伊勢丹 婦人・子供・婦人雑貨統括部 新宿婦人・子供商品部 玩具催事 アシスタントバイヤーの渡邉敦紀氏は「おもちゃに近い形をしていますが、しっかりとPOPとしての役割も果たしてくれています」と、その効果を語る。
「紙のPOPは設置されている棚までいかなければなりませんが、ZUKKUの場合大きな入り口としてそれぞれの棚へ案内してくれるので、うまく導線を作れていると思います」(渡邉氏)
「私も店舗に立つことがあるのですが、『なにこれなにこれ』と、笑顔でZUKKUを手に取ってくれるシーンをよく見かけます。やっていてよかったと思うと同時に、機能面などをさらにブラッシュアップして、より高い価値として提供できればいいですね」と、ハタプロ 山関祥也氏は、現場の様子を振り返る。