コンテストの様子に戻ろう。決勝に残ったのは、立教大学から2チーム、学習院大学1チーム、宮城大学1チームの計4チーム。この4チームがA会場で再度プレゼンをしたが、B会場で審査をしていた企業の担当者も集まるので、審査基準は予選のときとは異なってくる。それでも、各チームは滞りなくプレゼンを終え、審査に入った。

結果、学習院大学チームが最優秀賞の栄冠に輝いた。テーマは「それぞれの美しさを認め合える社会へ」というもの。これは、女性の美しさは画一的ではなく、おのおのが“美”を持っており、それを引き出すためのメイクアップをどうするか、というのがテーマ。資生堂に向けたCSVの提案だ。

このチームに、「なぜ、今回のテーマになったのか?」をたずねてみたところ、海外留学経験のある学生の意見がもとになったという。海外では女性たちが生き生きと自分たちの“美”を楽しんでいるのに、日本ではマスコミなどが提唱する“美”に縛られている。もっと、それぞれが自分の“美”を磨くべきではないかという提案だった。

ちなみに、このプレゼンを完成させるためにどのくらいの時間を使ったのかわからないそうだ。コンテストの前日も午前3時まで、SNSなどで詰めていたというから、相当な時間を費やしたにちがいない。ただ、「楽しかったです!」と目を輝かせながら話している様子をみると、今回のコンテストに参加したことは有意義だったといえるだろう。

左が最優秀賞に輝いた学習院大学チーム。中央はキリンHD賞に輝いた立教大学チーム、右はトヨタファイナンス賞に輝いた宮城大学チーム。このほかにも、各企業による賞が用意されていた

学生ならではの視点を企業が賞賛

最終審査を終えて、各企業の担当者の講評をうかがったが、多くの方が「よくこの短期間でCSVを理解した」という意見を口にした。CSVは2011年にアメリカで提唱された比較的に新しい概念だが、CSRと混同しやすい。それを、まだ社会に出ていない学生たちが、ほぼ例外なく理解していたことに企業担当者は感心していた。さらに、各チームが提案したアイデアに驚いていた様子がうかがえた。ある企業担当者は「社会に出てしまった私たちでは到底思いつかないアイデアが続出し、非常に印象深かったです」と話す。

参加者、審査員が集まって集合写真

筆者も同様の想いだ。予選が2会場にわかれていたので、すべてのプレゼンを拝見できなかったが、印象に残ったものを2つ挙げよう。

ひとつは宮城大学チームの提案。クルマの運転中、合流などで道を譲られるとハザードランプを点滅させて感謝を表す習慣があるが、これを「寄付ボタン」にすればというものだ。ほかのドライバーへの感謝の気持ちを“1円”で表し、集まった資金をインフラ整備や福祉に役立てる仕組みをつくれないかと提案した。

もうひとつは、立教大学チームのプレゼンで、“ジワ飲み”を提唱するもの。お酒の飲み過ぎは健康被害につながるだけでなく、飲酒運転といった法令違反を引き起こすこともある。節度を保ってお酒を楽しむには、ジワジワ飲むことが大切。ただ、ジワジワ飲むのならば、少し贅沢なお酒を味わって楽しもう、というものだ。

「なるほど……」と思いながらプレゼンを聴いたが、しばしばお酒の“ガブ飲み”をする筆者には、少々、耳が痛かったのも確かだ。