NEDOとIHIは7月7日、海流エネルギーを利用して発電する新たな再生可能エネルギー技術である水中浮遊式海流発電システムの100kW級実証機「かいりゅう」を、IHI横浜事業所で完成させた。2017年8月中旬より、鹿児島県十島村口之島沖の黒潮海域で、実際に海流を利用した100kW規模の海洋発電を行う。
NEDOの新エネルギー部 風力・海洋グループ 主任研究員の田窪祐子氏は、今回の実証実験で扱う海流エネルギーは、エネルギーが強く変動が少ないため、新しい再生可能エネルギー源として期待できると語った。特に日本の海洋エネルギーポテンシャルは高く、離島などの再生エネルギーの導入が困難な地域での活用が期待できるという。また、今回のプロジェクトのポイントとして、日本近海の黒潮を利用した海流発電システムであること、自立型姿勢制御システムを搭載していること、波浪などの影響を受けない浮遊式係留であることを伝えた。
また、欧米では波力、潮流を中心とした海洋エネルギー発電の実証研究が進展しているという。その一方で、実海域での運転実績が少なく、発電原価も風力発電などの既存技術より高コストであることなど現状の課題を挙げ、2011年度より実用化に向けた実証研究や高効率化研究などの要素技術研究に取り組んできたことを説明した。
次に、IHI技術開発本部の長屋茂樹氏によって、実証試験の詳細が説明された。発電装置を海底から係留して、まるで「たこ揚げ」のように海中に浮遊させることで、大水深域でも設置が可能となり、船舶航行に支障を及ぼさず、かつ波浪の影響を受けない発電が行えるというメリットを述べた。また、互いに逆方向に回転する双発式の水中タービンで、タービンの回転トルクを相殺することで、海中でも安定した姿勢を保てるそうだ。
IHIは、2011年度からNEDO事業による海洋エネルギーの次世代要素技術開発を開始し、水中浮遊式浮体システムや海中用大型タービン翼などの要素技術を開発した。その成果を受けて2015年から発電実証研究に移行し、実証海域の選定、実証試験機基本設計の承認をNEDOから取得し、IHI横浜工場で実証試験機を製造した。
「かいりゅう」という名前は、実証実験を行う鹿児島県十島村の小中学生に公募した中から決定された。左右に発電機を積み、中心部は変圧・送電、浮力調整といった役割を持つ。全長・幅ともに20m。
長屋茂樹氏は「今回の実証実験のフィードバックから、高効率化はもちろん、生態系に与える影響なども検討する。波力発電の設備利用率は約60から70%と、太陽光や風力発電と比較すると高い。今回使用する実証機器の発電量は100Kwだが、実験結果のフィードバックから機器を最適化していき2020年の実用化を目指す。また、2020年代には1機当たり2000Kwの発電を目指す」と今後の展望を述べた。