IDC Japanは7月5日、2016年の国内クラウドITインフラストラクチャ市場の調査結果を発表した。これによると、2016年における国内クラウドITインフラストラクチャ市場の出荷額は、前年比17.2%増の1432億5200万円に増加したという。

国内クラウドITインフラストラクチャ市場パブリッククラウド向け出荷額シェア、2014年~2016年:ODM Direct vs. Branded Vendors

今回の調査は、国内クラウドITインフラストラクチャ市場を「パブリッククラウド向け」および「プライベートクラウド向け」の配備モデル別ITインフラストラクチャの出荷動向について分析している。なお、ITインフラストラクチャとしてはサーバ、エンタープライズストレージシステム、データセンター向けイーサネットスイッチを調査対象としている。

2016年の国内クラウドITインフラストラクチャ市場における出荷額は前年比17.2%増の1,432億5,200万円となった。国内クラウドITインフラストラクチャ市場が2桁のプラス成長となった背景には、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みなどによる新規需要においても、既存システムの更新需要においても、クラウドファーストの考え方が広く浸透したことにあるという。

2016年はパブリッククラウド向けの出荷が63.7%と好調で、前年比25.1%増の913億円となり、パブリッククラウドサービスの主要な担い手は、グローバルなサービスプロバイダーに加えて、国内資本の大手ホスティングサービスプロバイダーなどへと広がったとしている。

過去数年を見るとIBM、富士通、NEC、日立製作所といった総合ITソリューションを提供するハードウェアベンダーにおいても、ハードウェアを中心に据えた事業戦略から、クラウドサービスやDX関連ソリューションを中心に据えた事業戦略への転換が進んできている。このようなパブリッククラウドサービスの創世記から普及期における市場参加者の変化が、2016年の国内クラウドITインフラストラクチャ市場におけるパブリッククラウド向け出荷額シェアに表れたという。

グローバルクラウドサービスプロバイダーは創生期から高密度実装可能かつ冷却効率の高いハードウェアを、大量かつ低価格で調達するためにODM(Original Design Manufacturer)から直接調達している。また、デルでは従来から大規模導入する顧客向けには個別仕様のハードウェアを提供している。

一方で、国内資本の大手ホスティングサービス事業者や、総合ITソリューションを提供するハードウェアベンダーの事業戦略がクラウド重視へと転換する過程において、冷却効率を高め、高密度実装も可能な製品が提供されるようになっている。総合ITソリューションを提供するハードウェアベンダーにおいては、顧客への販売に加え、自社や関連会社が提供するクラウドサービスでも自社製品を採用することになるという。

さらに、案件の規模によってはODM Directやデルと競合しうるベンダーが現れ、顕著な例としてファーウェイだと指摘している。国内市場において同社は特定の大口案件にフォーカスして提案しており、一部のサービスプロバイダーにおいて案件を獲得しているとIDCでは推測している。

これらの複合要因により、2016年におけるパブリッククラウド向け出荷では、ODM Directの占める割合が、2014年の43.4%から15.1ポイント低下して28.3%となった。2016年は二桁のプラス成長となった国内クラウドITインフラストラクチャ市場だが、成熟した国内市場においては、処理能力(Compute)に対する需要を増やさない限り、長期的にはクラウドITインフラストラクチャに対する需要は頭打ちになると考えられているという。

IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ グループマネージャーである福冨里志氏は「エンタープライズITインフラストラクチャベンダーは、既存の優良顧客を取り込むばかりではなく、IT活用による新規ビジネス創出を目指す顧客とのエンゲージメントを深め、自ら優良顧客を育てる取り組みが不可欠である」と述べている。