山口大学は、同大学大学院創成科学研究科(農学系学域)の丹野研一助教(植物遺伝育種学、考古植物学専門)が、これまで50年間達成されなかった早生デュラムコムギの育成に成功したことを発表した。
スパゲティなどパスタ用のコムギである「デュラムコムギ」は晩生であり、これを国内で栽培すると、収穫期が6月の梅雨と重なってしまう。収穫直前に梅雨の長雨を受けると、赤カビ病、穂発芽、ふやけによる子実変形、色相悪化が起こりやすく、見た目が悪くなるだけでなく、赤カビ病のカビ毒によって危険になるなど、国内栽培が非常に困難であった。
デュラムコムギを日本で栽培するためには「早生」である必要があるが、世界には早生の実用品種がなく、交配するための母本がなかったため、早生系統の育成はこれまで成功していなかった。
同研究では、これまで特性調査の実績があった古代コムギ種である「エンマーコムギ」に着目した。京都大学から分譲された古代コムギや、世界各地の在来種・品種を山口で試験栽培したところ、同県のパンコムギ旧奨励品種ニシノカオリと同程度に早生で 6 月初旬に収穫できるエンマーコムギ系統が見出された。
124系統のエンマーコムギのうち、2番目に早生でかつ健全であったエンマーコムギ系統を親に選び、これと世界最高クラスのカナダのエリート品種を交配した。
こうして育成したデュラムコムギは、適期の播種により山口市において6月初旬に登熟期となり、パンコムギとほぼ変わらない「早生」を育成できたといえる。また、播種適期がパンコムギより約2週間早く、作業分散できることで、秋の長雨シーズンを回避でき、播種作業が順調になるということだ。また、耐倒伏性があり、黄色粒であるという特長もある。
現在、F7およびF6世代の系統を、兄弟系統をふくめて60系統以上育成しており、これら系統は、早生・短稈・白粒(黄色粒)はすでに固定され、商品としての純度の問題はないが、種苗登録には数年かかる見込みだということだ。