日本IBMは3月13日、都内で記者会見を開き、気象庁の定める気象予報業務の許可を2月27日に取得し、自社の気象予報士が24時間365日、リアルタイムにアジア・太平洋地域の気象予報を行う気象予報センターを本社内に開設、気象予報や気象データを企業向けに提供するとともに、それらを活用したソリューションの提供を開始すると発表した。
今回、提供を開始するサービスは、同社の本社事業所内に米国、欧州に次ぐ3カ所目として設置された「アジア・太平洋気象予報センター(APFC: Asia Pacific Forecast Center)」において気象予報士が海外の気象局や、日本の気象庁、Deep Thunderなどの数値予報モデルのデータ、レーダー、アメダスなどの実況資料をベースに修正し、1時間ごとに(1~3時間先の短時間予報ではレーダーなどの観測データを用いて15分間隔で)気象予報データを作成し、企業向けに提供する。
IBMでは、世界25万カ所以上の計測点や5万回/日以上の航空機のフライトから収集するデータを分析することによる気象予報および航空業界など、さまざまな業界向けの気象関連サービスを提供してきたThe Weather Company(TWC)の製品およびテクノロジーを2016年1月に買収している。
同6月には、TWCのグローバルな予測モデルとIBMが開発した短期で狭域(約0.3kmから1.9km四方ごと)なハイパーローカル気象予測を組み合わせた新しい気象予測モデル「Deep Thunder」を発表している。同モデルは機械学習を活用し、気象データの実績を学習することで、気象がビジネスに与える影響を予想するという。
米The Weather Company プレジデント ビジネス・ソリューションズ担当のマーク・ギルダースリーブ氏はサービスの概要について「現在、法人向けと一般消費者向けのソリューションは、統合されたサービスが提供できている。昨今ではモバイルデバイスが爆発的に普及しており、われわれのサービス・アプローチもそのような状況に合わせていくことも重要だ。具体的には、各個人のデバイスのユーザーは自分が居る場所において天気の変化を必要としており、それに見合ったサービスを提供していくことが求められている。われわれのサービスは、Webサイトやモバイルデバイスのアプリを通じて、テレビや航空業か、地上輸送、小売、保険、農業、エネルギー、公共、政府機関にサービスを提供している」と説明した。
また、同氏は「気象は、すべてのビジネスに影響を与えており、一般企業は天気の事象が起こり、後追いでアクションを起こしているが、これからは気象情報を活用することで事前にプランを作成し、事業を進めることができる。企業に、われわれのサービスを活用してもらうことで、正確なデータに基づいて正確な予想を立案し、それをベースに自社の業績に良い結果をもたらすことができるだろう」と自信を口にした。
Watsonとビッグデータアナリティクスを活用した気象予報
日本IBM ワトソン事業部 The Weather Company Japan Sales担当の加藤陽一氏は「企業のビジネス上の成果を向上させるために、われわれのデータを活用し、業種別コンサルタントがそれぞれの顧客を洞察した上でビジネスの価値につながる提案をしていく。それを支えるテクノロジーとして、Watsonとビッグデータアナリティクスを活用し、顧客がサービスを利用することで事前に意思決定し、より良い結果につなげていくことを支援する」と述べた。
新サービスはSaaSとして提供し、The Weather Company データ・パッケージと、個別の顧客向けソリューション構築サービスの2つの提供形態を用意。The Weather Company データ・パッケージは、現在の気象や将来の予報、季節的な気象状況や悪天候に関する気象データなど広範なデータを利用できる。クラウド経由で気象データのAPIへのアクセスを可能とし、必要なデータを通知、予報データ、画像などを含めた形式で提供する。
すでに、IBMの統計解析ソフトウェア「SPSS Modeler」を利用している顧客は、追加サービスとしてデータの取得が可能となるほか、航空業界や電力業界、メディア業界といった業界要件に応じたパッケージ・ソリューションも提供する。データに加え、気象予報データから予報を3D地図上で動画として可視化したり、表形式やグラフなどに簡単に加工したりできるツールなどがパッケージされている。
個別の顧客向けソリューション構築サービスは、個別の顧客要件に応じて気象予報データの活用ソリューションの構築を支援するサービス。IBMクラウドを活用したSaaS型アプリケーションの構築を可能としている。今後、同社ではWatsonを活用し、気象予測の精度をさらに高めていく方針だ。
日本IBM 執行役員 ワトソン事業担当の吉崎敏文氏は「米IBMのロメッティCEOは『データは21世紀の新たな天然である』と位置づけており、ヒト・モノ・カネに次ぐ第4の資源と言われるデータをどのように活用していくのかということが重要であり、企業の競争優位の源泉であると、とらえている」と語った。